2012年12月25日

末期大腸がん を治した病院

ステージ4の大腸がんの5年生存率は、 20%を超えていれば優秀な病院とされる。

大腸がんは隣接する他の臓器へ転移し易いがんであるため、治療は難しく、ステージ4 いわゆる末期の大腸がんの手術では、広い範囲のがん病巣を徹底的に取る切る根気が執刀医に不可欠な素養となるのだ。

末期からの大腸がん治療の成績が高い病院を下記に挙げる。

  1. ステージ4大腸がんの5年生存率21.2%:名古屋医療センター(症例数328)
  2. ステージ4大腸がんの5年生存率20.3%:埼玉県立がんセンター(症例数456)
  3. ステージ4大腸がんの5年生存率19.4%:がん研有明病院(症例数712)

2012年12月20日

転移した末期乳がん に最高治療成績の病院

乳がんは今や治る「がん」だ。早期発見・早期治療が浸透したことから、5年生存率は非常に高く、1期2期ならそれぞれ98.2%、91.5%、3期でも67.8%だ。生き抜くことを前提に乳がんの治療が「生の質(QOL)」で評価される傾向も強い。 乳がんの生存率は、再発スピードが遅いため、本来は10年後生存率で評価すべきがんなのだ。

それでも、転移が拡がっているステージ4、つまり末期がんとなってしまった乳がんの治療は非常に難しい。ステージ4乳がん5年生存率は約31%前後とされている。

乳がん末期がんの治療に関して、注目すべき成果を挙げている病院として下記が挙げられている。ステージ4の末期乳がんの治療成績としては、非常に優れた成果だと言えるだろう。

  1. ステージ4乳がん5年生存率50.1%:千葉県がんセンター(症例数515)
  2. ステージ4乳がんの5年生存率46.4%:がん研有明病院(症例数2434)
  3. ステージ4乳がんの5年生存率42.4%:名古屋医療センター(症例数318)

2012年12月19日

ステージ4の肺がん でも治せる病院

末期がんと言えるステージ4の肺がんは、末期がんの中でも生存率が最も低い。

末期の肺がんの生存率が低い原因は、他のがんなら可能ながん病巣の全摘手術が、肺がんには不可能だからだ。そのため、肺機能を残しつつ、がん組織を最大限に切り取るかが肺がん手術の成否を分ける。大きくなってしまった肺がんによる気管支の閉塞、狭窄に対しては、高出力レーザーを用いてがん細胞を焼き切る(焼灼:しょうしゃく)治療法が有効だ。

非常に治療が難しいステージ4の肺がんの5年生存率が高いがん治療病院を、下記に挙げる。

  1. ステージ4肺がんの生存率8.5%:九州がんセンター(肺がん症例数537)
  2. ステージ4肺がんの生存率7.8%:兵庫県立がんセンター(肺がん症例数848)
  3. ステージ4肺がんの生存率7.6%:大阪府立成人病センター(肺がん症例数808)

    2012年12月18日

    末期胃がん でも生存率高い病院

    早期胃がんの手術ならば、ほぼ100%が成功する時代だ。しかし、問題はステージ3~4と症状が進行した胃がんだ。難易度の高い胃がん治療は、いかにがん患部を残さずに取りきるかの医師の技量が問われる。

    昨今は、患者の負担が軽い腹腔鏡手術の採用が増えるが、 進行がんの場合にはリンパ節などに転移したがんを丁寧に取りきるために開腹手術の選択が、生存率を左右することもある。

    単純ながん治療数だけでなく、ステージ4胃がんの5年生存率を比べた結果として がん患者の生存率が高い病院は、下記の3病院が挙げられている。

    1. 胃がんステージ4の生存率18.2%:愛知県がんセンター(胃がん症例数680)
    2. 胃がんステージ4の生存率15.6%:新潟県立がんセンター新潟病院(胃がん症例数856)
    3. 胃がんステージ4の生存率12.7%:呉医療センター(胃がん症例数352)

    2012年12月14日

    がん幹細胞と胃がん発症の仕組

    胃がんを発症させる最大の原因と目されるメカニズムが解明された。

    胃がんの多くの原因が胃の中に感染・増殖するピロリ菌であることは、既に研究者だけでなく、多くの一般人が知っていることだ。しかし、ピロリ菌による胃がん発症の仕組みは、これまでは不明で胃がん発症との因果関係しか解かっていなかったのだ。

    新発見した研究では、ピロリ菌ががん細胞を作り続ける「がん幹細胞」に働き掛けることで胃がんを発症させているメカニズムを解明したのだ。ちなみに現在でもピロリ菌は簡単な感染検査で発見でき、錠剤の摂取のみで容易に治療が可能になっている。この新しい解明成果によって、新たな胃がんの予防法や胃がん治療、胃がん新薬の開発が前進する可能性が高まっている。

    研究は慶応大のチームが米医学誌に発表した。

    2012年12月7日

    肺がんに新検査技術の有用性を実証

    犬には肺がん患者を嗅ぎ当てる高い能力があることが証明された。簡単な検査で肺がんを早期発見できるようになる可能性が高まっている。

    昔からがん患者の側の犬が奇妙な行動を取る事例は多く、 2011年にはドイツの研究チームが実施した検証実験でも小規模ながら成果が上がっていた。

    オーストリアで実施された犬による肺がん検査では、 120もの呼気検体の中から70%という高い確率で肺がん患者を嗅ぎ当てたのだ。犬による肺がん検査の最終目標は病院で犬が肺がん検査をすることではなく、犬が検知している肺がん特有の臭いを突き止めることとされている。

    がんに特有の臭いが判明すれば、近い将来に電子的な臭気センサーによる簡単な肺がん検査が可能となるだろう。そうすると、肺がん検査が飛躍的に簡便になり、肺がんの早期発見早期治療が容易になることから、肺がん患者の完治率、生存率が劇的に向上するに違いない。

    オーストリアの共同研究チームが5日発表した試験的研究の結果で、 肺がんの臭いからがんを判別する人工鼻は米国のMITでも研究が進められている有望ながん診断技術なのだ。

    2012年12月6日

    乳がん新薬が余命を大幅に延長

    乳がん治療の抗がん剤新薬の治験が好成績を収めている。

    開発中の乳がん新薬は、開発コードの「PD-991」で呼ばれている。「PD-991」は、米国の大手製薬ファイザーが開発中の抗がん剤新薬

    PD-991は、進行性・転移性乳がんの患者を対象とした抗がん剤新薬で、その治験は第2相臨床試験が完了した。新薬の治験結果は、生存期間の著しい改善が認められたのだ。

    既存の抗がん剤レトロゾール(製品名:フェマーラ)の単独投与では7.5カ月だった余命期間(無増悪生存期間)が、新薬PD-991を併用投与した結果は26.1カ月へと大幅に余命が延長されたのだ。

    今後は、第3相臨床試験が開始される計画で、 乳がん抗がん剤新薬へ大いに期待が高まっている。

    2012年12月5日

    がん増殖の原因物質を抑える抗がん剤新薬

    抗がん剤アフィニトール(一般名:エベロリムス)の新規格「アフィニトール錠2.5mg」が新発売された。

    「アフィニトール」は、mTOR阻害剤という種類の分子標的薬の抗がん剤だ。

    mTORとは特殊なたんぱく質で、細胞の増殖や血管の新生を促す信号が がん細胞内に入った際に情報を伝達する働きがあり、 がん細胞内にある過剰に存在している。あるの司令塔のような役割を担っている。 mTORが働くために、がん細胞が際限なく増殖するのだ。 mTOR阻害剤である「アフィニトール」は、 mTORの過剰な働きを抑制することで がん増殖を抑える分子標的薬に分類される抗がん剤新薬だ。 「アフィニトール」は、日本では初めて承認された経口のmTOR阻害する抗がん剤で、その効果効能は、がん細胞の増殖抑制と血管新生阻害とされる。

    現在「アフィニトール」は、世界90か国以上で承認され、日本では乳がん、悪性リンパ腫、肝細胞がん、「消化管または肺原発の進行性神経内分泌腫瘍」を対象として治験が進められている。

    アフィニトールは、2010年1月に根治切除不能または転移性の腎細胞がんの治療に対して、その効能効果が承認され、「アフィニトールR錠5mg」が既に利用されている。その後、2011年12月には膵神経内分泌腫瘍の治療に効能追加が認められていた。さらに、2012年11月21日には結節性硬化症にともなう「腎血管筋脂肪腫」 および「上衣下巨細胞性星細胞腫 」の効能追加を取得した。

    新規格「アフィニトール錠2.5mg」は、治療関係者の要望から容量の加減が可能になった新薬なのだ。

    2012年12月3日

    新マーカー発見で がん は根治治療へ

    がんの根治治療には、がん細胞を造り出す「がん幹細胞」を根絶する必要があることが解ってきた。しかし、これまでは、がん幹細胞を特定できるマーカーが無かったために、正常細胞の幹細胞とがん幹細胞とを区別することが不可能で、マーカーが無いことからがん幹細胞を標的とする抗がん剤も開発が困難だった。

    しかし、ついに がんの幹細胞だけに反応するマーカーが特定されたのだ。

    新しマーカーが発現したがん細胞を除去しても正常組織には副作用が無いことから、全く新しいがんの根治治療法の開発へ大きな前進である。

    発見されたがんマーカーは、消化管幹細胞マーカーの候補遺伝子としては既知であった「Dclk1」。

    マウス実験において、腸のDclk1を識別できるよう操作した結果、正常な腸ではごく少数でやがて消滅したが、がん幹細胞がある腸では、Dclk1が増え続けることが発見されたのだ。また、新がんマーカー「Dclk1」が発現しているがん細胞だけを排除する遺伝子操作をしても、正常組織への影響は無いが、がん腫瘍の大きさは縮小し5分の1になった。つまり、がん増殖の根源であるがん幹細胞を標的とした新治療法開発への最大の障害が解決されたことで、 がんを根治できる新しい抗がん剤、治療法が一気に躍進する可能性が開かれたのだ。

    京都大大学院が英科学誌ネイチャー・ジェネティクスへ発表した。

    2012年11月28日

    1回3分の最先端がん治療が高額な原因

    注目度の高い最新がん治療の代表といえば「陽子線治療」だ。

    一般的な放射線治療に使われるX線は、皮膚に近いところで放射線量がもっとも高くなり、体の深部に存在するがん病巣に対しては線量が低くなってしまう。しかし、陽子線によるがん治療では体の深いところで放射線量が高くなり、しかもがん病巣に留まる性質があるのだ。この性質によって、陽子線がん治療では、体内深部のがん患部にピンポイントで照射できるのだ。

    X線による放射線がん治療が体へのダメージを与えて副作用が酷いのは、がん細胞以外の正常な細胞にも放射線を浴びせてしまうことが原因だ。陽子線がん治療ではこの副作用が劇的に低減され、がん患者体全体への負担も少なくてすむ。また、陽子線がん治療は、初期がんから末期がんまで幅広いがん患者を治療することが可能だ。ただし、がんの種類や大きさ・位置などによって効果が変わってくるため、陽子線がん治療を受ける前に綿密な診断が必要不可欠だ。

    なお、食道がんには適用可能だが、 胃がん大腸がんなど消化器系のがんは放射線を当てることで潰瘍が発生するリスクが高く、不適とされる。

    陽子線がん治療の実際の治療では、病巣を狙い非常に精密なピンポイント照射ができるため、陽子線の照射前には体を固定する必要がある。陽子線の照射中に体を動かさないことが高いがん治療効果と低い副作用につながる。しかし、専用機器に横たわり陽子線を照射される実時間は、1回たったの2~3分程度だけだ。この間、痛みや痒みも殆ど感じることは無い。

    そしてこの治療を週5日間、2~7週間続けるのが標準の陽子線がん治療課程となっている。したがい、基本的には入院の必要性が無い。治療期間が短いために患者の体力的な負担は非常に小さく、陽子線がん治療に合う症状と診断された場合には、治療の選択肢として十分な価値はあるだろう。

    陽子線がん治療の最大の課題は高い治療費だ。患者の自己負担は、がんの種類、治療期間に関係なく約290~320万円とされる。

    費用が高いのは、設備が大規模であるだけでなく、運営費用も非常に高いからだ。陽子線を発生させる治療機器だけで約50億円、運営費は電気代が月額で約1200万円必要なのだ。

    陽子線治療は民間保険会社の先進医療特約の対象なのだ、もしも保険に予め加入しているなら、約300万円の治療費を自己負担することなく、 最先端のがん治療を受けることが可能となる。

    遠からず公的な健康保険による治療対象となることが議論されており、がん患者からも強く望まれている。

    2012年11月20日

    がんを攻撃する免疫細胞治療が続々

    がん免疫細胞治療の一種であるナチュラルキラー細胞療法(NK細胞療法)が提供開始された。

    免疫細胞の一種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)は, 血液中に10~20%存在しており、がん細胞やウイルス感染細胞に対して、強い細胞殺傷能力がある。

    がんを発症した患者はNK細胞を含めた免疫力が低下している症例が多いための、 免疫療法では、免疫細胞の数を増やしたり、免疫細胞の活性度を上げたりすることで がん細胞の低減を計る治療法として多様な手法が試みられている。

    今回に提供が開始された新治療法では、 NK細胞の新しい培養技術を開発したことで、 10億個~100億個という大量のNK細胞の投与が可能になった。

    これまでは、NK細胞を短期間では大量に増殖できなかったが、新しい培養技術によれば安全なNK細胞を2週間で最大2000倍まで増殖できる。増殖された免疫細胞であるNK細胞を大量に体内へ戻すことからNK細胞療法と呼ばれるのだ。

    各種の免疫細胞療法は、副作用の無い究極のがん治療法として注目を集めており、 NK細胞療法だけでなく、樹状細胞ワクチン療法やCTL(免疫細胞)療法、さらにはサプリメント療法や温熱療法と多岐に渡っている。

    複数の免疫細胞療法を併用することで、さらにがん治療効果を高めることが期待できるのだ。

    2012年11月16日

    乳がん,肺がんの再発防止効果を実証

    がん再発の原因とされる「がん幹細胞」を「再発しないがん細胞」に変える効能が、既存薬である糖尿病治療薬メトホルミンにあることが発見・実証された。

    がんを外科手術で取り除いても、少しでもがん幹細胞が残されているとがんが再発してしまう。しかし、この「がん幹細胞」は放射線治療にも抗がん剤治療にも効果が薄く、 がんの根治が困難な原因となってきた。

    しかし、がん幹細胞の維持に糖代謝が関係していることが発見され、「がん幹細胞」を「再発しないがん細胞」へと変化させる新薬の開発を目指して研究された。そして、既存の糖尿病治療薬である「メトホルミン」の投与によって代謝調節遺伝子を活性化させる効果で、 がん幹細胞が「再発しないがん細胞」に変化する仕組みを解明した。マウス実験を重ねることで、新治療法の効果と作用メカニズムまでもが確認されたのだ。

    糖尿病治療薬「メトホルミン」は、 がんの増殖を抑制する効果が指摘されてきたが、これまでは経験的な知見に留まっていた。しかし、メトホルミンがガン再発を抑制するメカニズムが解明されて、がん幹細胞への効果が確認されたことで、 乳がん肺がんの治療にも応用できる可能性が高まっている。

    糖尿病治療薬として既に承認薬となっているメトホルミンのがん治療への応用は、がんへの効能追加申請と承認を経て早期に開始される可能性が高いだろう。

    この新しい抗がん治療は、山形大と国立がん研究センターの共同研究チームが世界で初めて実証した。研究論文は米国の科学誌ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシンに掲載されている。

    2012年11月15日

    小児がん新薬を承認申請

    子供のがんである「小児悪性固形腫瘍」は日本で年間に約1,000~1,500人が発症する。

    小児がん治療用の抗がん剤が新たに追加される見通しだ。

    この小児がん「小児悪性固形腫瘍」に対して、ヤクルトが抗悪性腫瘍剤「カンプト」の効能・効果追加の公知申請を厚生労働省に行った。

    「カンプト」は小児がん「小児悪性固形腫瘍」に対しては新薬となるが、「非小細胞肺がん, 小細胞肺がん, 卵巣がん, 子宮頸がん」の治療に対する効能・効果では1994年1月に承認済みで、さらに「胃がん, 結腸/直腸がん, 乳がん, 有棘細胞がん, 悪性リンパ腫」の治療に対しても 1995年9月に効能・効果の追加承認を受けている。

    小児がんに対する新薬の承認申請は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て開発要請が出されたもので、早期に承認され、小児がん治療に利用できる要望が高い新薬なのだ。

    2012年11月14日

    すい臓がん治療に有効な併用療法

    すい臓がん治療の新しい抗がん剤治療法が注目を集めている。 すい臓がんの延命効果が確認されたためだ。

    抗がん剤のアブラキサン(パクリタキセル)とゲムシタビン(ジェムザール)の併用で、生存期間が延びることが確認されたのだ。アブラキサンは、抗がん剤「パクリタキセル」をヒトアルブミンと結合させた懸濁注射剤だ。

    スイスの製薬会社セルジーンが、未治療の進行性すい臓がん患者を対象とした治験を実施し、アブラキサン(パクリタキセル)とゲムシタビン(ジェムザール)の併用治療で第3相臨床試験の結果、全生存期間が有意に改善したのだ。さらに、この2つの抗がん剤を併用する新治療法の安全性は、アブラキサンの単独療法の臨床試験と同等だったとされる。

    すい臓がんの抗がん剤は種類が少ないため、新治療法に期待が高まっている。

    2012年11月2日

    前立腺がんに増殖抑制効果の抗がん剤新薬

    前立腺がん治療用の抗がん剤新薬「ゴナックス 皮下注用」が新発売された。

    新薬ゴナックス(一般名:デガレリクス酢酸塩)は、前立腺がん患者のがん増殖を促進してしまう男性ホルモンのテストステロンの発生を抑えることで、前立腺がんの増殖を抑制する効果がある。

    海外では既に62か国で承認されている皮下注射される抗がん剤だ。日本では2012年6月29日に承認取得し、同年8月28日に薬価基準に収載された。

    アステラス製薬から、2012年10月23日(火)に販売が開始される。

    2012年10月31日

    肺がん,乳がん,大腸がんのガン再発を抑制するには

    肺がん転移を抑制する効果が、心不全治療用のホルモン製剤にあることが判った。

    がんが心臓へ転移することが稀であることから、心臓特有のANPというホルモンに着目した研究チームが、 2009年から552人の非小細胞肺がんの患者データを詳細に調査したのだ。

    その結果、心不全治療などでホルモン剤を使用していた肺がん患者の2年後の再発率は4.5%と低い一方で、ホルモン剤を使わなかった肺がん患者の19.2%にがんが再発していた。このがん再発率の大きな差は、がんの進行度にも関係なく、ホルモン剤のがん抑制機能と解釈できた。

    人のがんを移植されたマウス実験でも、ホルモン剤の がん抑制効果は検証され、有望な結果が得られた。がん細胞を移植したマウスにホルモン剤を投与すると血管転移するがん細胞数は、肺腺がんの場合で約5分の1、肺の大細胞がん,大腸がん,乳がんの場合には約3分の1にまで減少したのだ。

    これらのがん抑制効果は、ホルモン剤が血管の内壁を守ることから、がん細胞が漏れ難くなっている仕組みが解明されている。

    ホルモン剤の肺がん再発予防効果が実証されただけでなく、他のがんに対しても転移予防薬となる可能性が高いため、今後の研究進捗に期待がかかる。

    ホルモン剤の がん転移抑制効果は、大阪大と国立循環器病研究センターが発見した。

    2012年10月29日

    がん延命効果の市販鎮痛剤

    鎮痛剤のアスピリンが、大腸がんの死亡率低減に効果的と判った。

    アスピリンががん治療に有効とされたのは、特定の遺伝子に変異がある大腸がん患者に対しての治療効果だ。 大腸がんと診断された964人の経過を細胞を分析と合わせて追跡調査した結果に判明した。

    大腸がん患者のうち「PIK3CA」というがん細胞の増殖に関与する遺伝子に変異があった161人と、遺伝子変異のない803人について、アスピリンを飲むかどうかで予後の違いを比較したのだ。

    PIK3CA遺伝子変異があった患者群では、アスピリンを飲む習慣がなかった95人のうち大腸がんが原因で26人が死亡した。一方、アスピリンを週に複数回飲んでいた66人では、大腸がんが死因だったのは3人だけだったのだ。この調査結果から有意にアスピリンの有効性が示されている。

    米ハーバード大の研究報告が、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された。

    2012年10月26日

    新しい炭素新素材で肺がん新治療法

    炭素でできた新素材「カーボンナノチューブ」によるがんの新治療方法が開発された。「カーボンナノチューブ」は炭素原子が直径数ナノメートル(ナノは10億分の1)に六角形に結合した円筒形物質。鋼鉄より硬く、弾力性があり、電気や熱を通す性質がある。

    がんの新治療法は、カーボンナノチューブへ近赤外線を照射することで活性酸素を発生させ、活性酸素によって治療部位のがん細胞を死滅させる。

    京都大の研究グループが実験に成功した。

    カーボンナノチューブに対して、光を照射すると熱や活性酸素が発生することは既知だった。今回の新治療法では、人体への影響が少なく透過性が高い赤外線「近赤外線」を利用する。カーボンナノチューブの「半導体性」と呼ばれる性質を持った部分だけが近赤外線を吸収して活性酸素を発生するのだ。

    ヒトの肺がん細胞とカーボンナノチューブを混ぜて近赤外線を10分間照射した実験では、熱による影響も含めて45%ものがん細胞が死滅した。

    微量のカーボンナノチューブを血管から注入して、患部に近赤外線を照射する新治療法が検討されている。

    2012年10月23日

    がんを予防できるサプリメントとは

    サプリメントのマルチビタミンを毎日飲むことで、がんのリスクが減らせる ことが実証された。

    米国で男性1万5000人を対象とした長期の臨床試験(治験)が実施され、ビタミンのサプリメントのがん予防効果が確認された初めての大規模治験となった。

    平均11.2年間を追跡調査されたマルチビタミンのサプリメントを服用した男性被験者群はプラセボ(偽薬)投与群と比較して、がんの発病率が8%も減少したのだ。

    ただし、このリスク減少に多大な期待は禁物で、主流のがん予防が、禁煙、抗肥満、健康的な食事、継続的な運動であることには間違いない。マルチビタミンを摂っていても喫煙を続ければ、がんリスクは高いということだ。

    国立衛生研究所(NIH)が資金提供して製薬最大手ファイザーが実施したこの大規模治験の結果は、米国がん研究会議(AACR)で発表され、米医学学会誌(JAMA)に掲載された。

    2012年10月18日

    肺がん新薬の効果が落ちる原因を解明

    肺がん新薬ザーコリが効きにくくなる仕組みを、金大附属病院がん高度先進治療センターが解明した。この肺がん新薬ザーコリはがんを小さくする高い効果があるが、治療開始から1年前後で効かなくなる問題があった 。しかし、既存の抗がん剤を併用することで効能を維持できる可能性が発見されたことで、再発を防ぐ治療法の開発に向けた一歩となりそうだ。

    研究されているのは、国内で2012年5月末に販売が始まった治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)。体内のがん細胞に関連した特定の分子だけを攻撃する「分子標的薬」の一種で、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害する”肺がん特効薬”だ。この遺伝子を持つ肺がん患者には、非常に高い治療効果が現れることが分かっている。

    今回の研究では、ザーコリの効果が落ちる原因として、ザーコリによってALK融合遺伝子の働きを止めた後も、 がん増殖に関わる「上皮成長因子受容体(EGFR)」に正常細胞から分泌される特定の物質が結合することで、 がん細胞が生き延びてしまうことを解明したのだ。

    試験管内やマウス実験では、新薬ザーコリの効能が薄れても、 肺がんの分子標的治療薬「エルロチニブ」や、 大腸がん治療に使われる「セツキシマブ」を併用すると、がんが縮小することも確認された。

    日本人のがん死亡原因の1位である肺がんは、年間約7万人が亡くなる。 肺がんに悩むがん患者に、ザーコリの効能を継続させるさらなる研究が期待される。

    2012年10月17日

    前立腺がんの原因物質が焼肉に

    50代後半の男性にリスクが高まってくる前立腺がん。 診断・治療法が進化したことで、死亡率は減少傾向だ。 前立腺がんは、進行が非常に遅いタイプが多いため、直接的な死因になる人はごく一部だけだ。 しかし、がん発症リスクを減らことは、男性共通の課題と言える。

    多くの癌と同様に前立腺がんのリスクも食生活に密接に関連している。 タンパク質は動物性ではなく、豆腐などの植物性が望ましく、肉よりも魚での摂取が望ましい。

    米国南カリフォルニア大学の研究報告では、 高温で焼き上げた肉の摂取は、明白に前立腺がんリスクを上昇させるとのことだ。

    この調査は、対象者が1096人。うち、早期前立腺がん患者717人、進行前立腺がん患者1140人で比較した結果、 豚肉や牛肉などの肉を週に1.5回以上フライパンで焼いて食べる男性の 進行前立腺がんのリスクは、30%も高かったのだ。 また、フライパンではなく直火焼きなど高温調理による赤身肉を週に2.5回以上食べると、 前立腺がんリスクは更に高く、40%まで上昇する。

    一方、同じグループで調べられた鶏肉のがんリスクについては、 フライパン調理では同じくリスクが上昇したが、直火焼きでは逆にリスクの低下傾向が発見された。

    このがんリスクの原因は、高温調理でタンパク質から発生する「HCAs」と、 脂身のコゲ部分や調理の煙に含まれる「PAHs」という強力な発がん物質に起因していることが判っている。

    つまり、鶏肉の発がんリスクが少なかったのは、比較的に低脂肪であるためにPAHsの発生が少なかったと推論された。 しかし、フライパンでの調理ががんリスクを上昇させる理由はまだ解明されていない。 いずれにせよ、焼き過ぎた肉は量を控えるべきであることは明白ちなった。

    日本人の前立腺がん罹患率が米国の10分の1以下と低いのは、 日本の伝統食文化が焼き物に偏らず、食品と調理方法が多様であることが大きいのだ。

    2012年10月16日

    胃がん新薬の治験が良好な結果

    転移性胃がんの抗がん剤新薬が治験で良好な結果を収めた。

    米製薬大手のイーライリリーが開発中の抗がん剤ラムシルマブが、転移性胃がんの第3相臨床試験で良好な結果を示したのだ。

    この抗癌剤新薬の治験では胃がん・胃食道接合部がん患者を対象として、第2選択薬として新薬ラムシルマブと最善の支持療法(BSC)を行った患者群をプラセボ(偽薬)とBSCの患者群と比較した。

    その結果、新薬ラムシルマブは全生存期間(OS)の改善という主要評価項目を達成し、無増悪生存期間(PFS)を延長する良好な結果を得た。これは新薬ラムシルマブの第3相試験としては、初めてのデータだった。

    世界保健機関WHOによると、 胃がんは世界で4位のがんで、新規に胃がんと診断される患者数は年間98万960人。そのうち、73万8000人が胃がんで死亡する。

    2012年10月15日

    身長高いとがんリスクも高い?

    身長が5センチ高くなるごとに卵巣がんリスクが7%上昇することが判った。

    英国オックスフォード大学が世界中の研究データを解析した結果、身長やBMI(肥満指数)の高い女性ほど卵巣がんリスクが高まると指摘したのだ。

    身長が5センチ高くなるごとに卵巣がんリスクが7%、BMIが5上がるごとに10%上昇したが、BMIはホルモン補充療法(更年期障害の治療法)を行うと関連が認められなくなったという。

    女性の身長やBMIが卵巣がんの発症率に関連していることは、これまでの研究結果でも示唆されていた。しかし、一貫した結果成果は無かった。

    オックスフォード大学では、卵巣がんに関する47の研究患者データに含まれている卵巣がん患者2万5,000人超、卵巣がん患者でない女性8万人超を解析した。このデータは世界中のほぼ全て国や民族を網羅していた。

    データ解析の結果、160cm未満(平均154.8cm)を基準として、身長が5cm高くなるごとに卵巣がんリスクが7%上昇することが判明したのだ。

    例えば、身長155センチの女性と比べ、165センチの女性では卵巣がんリスクが14%高いのだ。この関連性は、閉経した女性がホルモン補充療法を行っていても同様だった。

    一方、BMIと卵巣がんの関連性も指摘された。 BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割ったものだ。身長160センチ、体重55キロの人のBMIは21.5だ。

    BMIは25未満を基準として、閉経後にホルモン補充療法を受けたことのない女性ではBMIが 5増えるごとに卵巣がんリスクが10%上昇した。こちらの関連性も、ホルモン補充療法との関連性は無かった。

    身長と卵巣がんリスクが関連しているという結果は、卵巣がん発生の仕組みを解明し、治療法を開発する上で重要なのだ。

    研究成果は米医学誌「PLoS Medicine」へ発表された。

    2012年10月11日

    乳がん, 肺がん,脳腫瘍,前立腺がんに有効な抗がん剤新薬

    マリファナが がん細胞を殺し、増殖を妨ぐ効果のあることが証明された。しかも、抗がん剤療法のような酷い副作用が無い。

    マリファナの抗がん効果は、含まれている「カンナビディオール」や「THC」による作用だと判明している。

    マリファナに存在するカンナビディオール(CBD)という物質が、 がんの痛みや吐き気、抗がん剤療法の副作用を緩和することは既知だった。

    さらに明らかになったのは、このCBDが、がん細胞の成長を遅らせ、がん細胞の形成を妨げるため、がん抑制やがん転移防止に有効だという新しい作用だ。

    この抗がん効果については、カリフォルニア・パシフィック医療センターが2007年に手掛かりを発見していた。カンナビディオールは、癌を他の細胞に転移させる鍵となるタンパク質であるID-1遺伝子のスイッチをオフにする機能を発見されていたのだ。

    この遺伝子ID-1は、健康な細胞では限られた期間しか働かないが、 乳がんや進行性がんの患者の細胞では活発に活動し、 がん転移を引き起こすことが観察された。

    この遺伝子ID-1によって活性化される がん(腫瘍)が10種類程度は存在するのだ。そして、カンナビディオールはこのがん細胞の活性化を抑止することで、前例のない強力な治療法となる可能性が明らかになったのだ。抗がん剤による化学療法では、がん細胞を止めつつも他の正常細胞も殺してしまい、病人の体だけでなく、時にはがん患者と精神や人生の質までも破壊する。しかし、化学療法と違って、カンナビディオール(CBD)なら特定のがん細胞だけを治療対象とすることができるのだ。

    「カンナビディオールは何千人もの患者に、非毒性治療の希望を与える」と、研究グループのリーダーを務めた研究者、マカリスターは述べた。しかしそれ以来、研究室で観察された効果を人体で検証するために必要な臨床試験はまだ行われていない。

    他方では、マドリードのコンプルテンセ大学が、マリファナに含まれる成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」の抗がん作用を発見している。 THCは、向精神作用を引き起こす成分でもあるが、がん細胞がテトラヒドロカンナビノール(THC)に晒されると死滅することを発見したのだ。

    1998年には、 THCが脳腫瘍の中でも特に攻撃的な形態を持つがん細胞に対して、アポトーシスすなわちがん細胞の自然死を誘発することを証明した。

    これに続いて、多くの裏付けがさまざまな国で行われたが、 THCやその他のマリファナから派生する物質=カンナビノイドは、直接的な抗腫瘍効果をもっていることがわかっている。

    THCの抗がん効果に関しては、 2006年にスペインで人間への臨床試験が実施されている。標準的な脳腫瘍治療法では回復できなかった9人の脳腫瘍患者へTHCが投与した。 THCはカテーテルによってがん患部へ直接に注入された。結果として、9人全員の脳腫瘍が著しく減退したこと成果が上がり、『Nature』へ発表された。

    さらにTHCは、 肺がんに対しても同じ効果があることをハーバード大学が発見した。ハーバード大学が最も注目した抗がん効果は、 THCが肺がんのがん細胞のみを攻撃し、健康な細胞へは攻撃しなかったことだ。

    その後、白血病に対しても同様の抗がん効果があることを、ロンドンのセント・ジョージ大学が前臨床試験で実証した。

    マリファナから派生する物質=カンナビノイドは、イタリアの研究では前立腺がんに対しても非常に有効とされ、イギリスのランカスター大学では結腸がんに対しても有効に作用すると報告している。

    これらすべては、腫瘍との戦いにおいて新しい、将来有望な道筋を開く。しかし、はっきり言っておかねばならないのは、向精神作用をもつドラッグと見なされているカンナビスの「一般的な」使用による薬理的、毒物的な影響は、直接的に向精神性物質を摂取することになるだけでなく、熱分解、すなわち紙巻きの「麻薬タバコ」の燃焼の過程で生み出されるその他の物質による脅威に晒されることにもつながるということだ。

    マリファナから発生する煙には発がん物質である酸化窒素、一酸化炭素、シアン化物、ニトロソアミン、フェノール、クレゾール、が含まれているため明確に有害だ。

    しかし、マリファナから派生する物質=カンナビノイドを有効に抽出すれば、非常に効果の高く、副作用の無い、有望な抗がん剤が生成できるのだ。今後の研究に進展が注目される。

    2012年10月9日

    末期肺がん の腫瘍を全滅した抗がん作用

    抗がん作用が話題なのはキクイモの中でも、フランス原産の仏キクイモ「アルティショー・ドゥ・ジェルザレム」だ。

    従来からキクイモは糖尿病に効用があるとされてきた。キクイモが含有している「イヌリン」という成分が腸内環境を整え、血糖値を抑制する作用があるとされているためだ。「イヌリン」はタマネギやゴボウなどにも多く含まれる成分だが、キクイモには特に高濃度に含まれているのだ。

    しかし、このキクイモの一種に、抗がん作用の高い品種が発見され、治療効果が徐々に明らかになっている。

    がんが肺内で転移した「ステージ4」いわゆる「末期肺がん」と診断された女性(82歳)が、仏キクイモを食することでがんを克服したのだ。

    末期がんとの診断後に抗がん剤治療を行ったが、腫瘍は増大。治療の術が無くなり、ビタミンCを飲むだけの在宅療法となった肺がん患者。糖尿病も患っていたこの患者が、仏キクイモを味噌汁に溶かすなどして食べた。量は、2週間程でキクイモの粉末150g。

    すると、7つあった肺の腫瘍のうち2つが消滅した。さらに、その後の治療でさらに3つの腫瘍が消滅し、最終的には、抗がん剤イレッサの投薬治療によって、最後の2つの腫瘍も消滅した。がん発見から7年後も再発無く健康だという。

    イヌリン以外の成分は研究されていなかったキクイモに関する解析研究をスタートされた。現在までに、リノール酸、オレイン酸等の複数の不飽和脂肪酸が混ざっている部分に、抗腫瘍活性が見られることが判明したのだ。抗がん効果の複数の症例が集まり、かつ腫瘍マーカーの改善例が顕著ながんは、「前立腺がん」「大腸がん」「肺がん」。

    未解明が多いものの、仏キクイモを食べることでがんを克服した人が少なからず存在する。今後は、有効成分の特定などに注目が集まるだろう。

    ●糖尿病患者のための食料だったキクイモ
    キクイモはキク科ヒマワリ属の植物。 19世紀半ばに海外から日本へ伝来。9月頃に黄色い花をつけ、10月から11月に地中に芋が実る。約3000種もの品種があるとされている。抗がん効果が話題となっているのは、表面の凹凸が比較的少ない品種である。フランス原産の青・赤紫色キクイモ(フランス名:アルティショー・ドゥ・ジェルザレム)、通称、仏キクイモである。

    2012年9月28日

    結腸がん、直腸がん の抗がん剤治療に新薬を承認

    結腸直腸治療の抗がん剤新薬「スティバルガ」(一般名:レゴラフェニブ、製造:バイエルの)が米食品医薬品局(FDA)に承認された。治療対象は、既存の治療薬に不応性の患者向けとされている。

    スティバルガは、がん細胞の成長を促す複数の酵素を阻止するマルチキナーゼ阻害剤に分類される抗がん剤。 FDAに承認された適応症は、他の治療薬による治療後に別の部位へ転移してしまった結腸直腸がん。治療サイクルは28日間で、うち21日間に錠剤として服用する。

    承認の基となった治験結果は、患者760人を対象とした臨床試験での効果だ。

    患者760人全員が結腸がんで標準とされる既存抗がん剤「アバスチン」「アービタックス」「ベクティビックス」による治療を受けた経緯があった。

    そして新薬レゴラフェニブを投与した500人の患者群の平均生存期間は6.4カ月となった一方で、プラセボ(偽薬)を投与した250人の患者群は5カ月だったため、新薬によって生存期間が延長されたとされた。

    スティバルガの月額費用は9350ドル (80円/USD = 約75万円)。バイエルは患者が治療費を払えるよう、金銭的支援を提供するプログラムを設立している。

    新薬スティバルガはFDAの「優先審査指定」により承認された。 FDAの優先審査とは「既存の治療薬と比較して、治療上の進歩の可能性がある医薬品を優先的に審査するシステム」で、スティバルガの承認は結腸がん治療薬としてはこの数カ月で2番目。

    FDAは8月にもサノフィが開発した転移性結腸直腸がん治療薬「ザルトラップ」を化学療法「フォルフィリ」との併用投与で承認している。

    米国の疾病対策センター(CDC)によると、結腸直腸がんは米国人のがんによる死因では1位で、毎年5万人の米国人がこのがんで死亡する。日本、アジアでも食生活の西欧化で患者が増えているがんゆえに、新薬の日本承認も期待される。

    2012年9月20日

    がんで子宮摘出後に子宮移植

    子宮移植手術が世界で初めて実施された。子宮移植手術を実施したのは、スウェーデンのイエーテボリ大で、 16日までに2件の子宮移植に成功した。

    移植を受けた2人の女性はいずれも30代。うち1人はがん手術で子宮を摘出した女性で、残る1人は先天的に子宮が無い患者だった。 子宮の提供者はいずれも患者の母だった。

    手術は問題無く終了し、術後の患者の容態も良好、子宮を提供したそれぞれの母も体調良く、数日以内に退院の予定。

    がん治療のために、子宮摘出や放射線治療が不可避の場合には精神的にもがん患者が苦しめられる。

    既存の最先端の取組みとしては、卵子の冷凍保存で望みを繋げた。がん治療前に卵子を取り出して、極低温で冷凍保存しておき、希望する時期に体外受精を試みる取組みは多くの臨床例が報告され始めている。

    今回の子宮の移植は全く新しい取組みで、今後の患者の経過が注目される。

    2012年9月18日

    臨床試験が開始の抗がん新薬はがん幹細胞を標的

    がんが治り難く、再発しやすいのは、現在の治療では がん幹細胞が叩けていないからだと考えられている。がん細胞を生み出すもとである「がん幹細胞」を標的とした臨床研究が相次いで始まる。

    慶応義塾大学などは胃、大阪大学は肝臓が対象で、いずれもがん幹細胞の表面にある物質の働きを抑える抗がん新薬の臨床試験だ。

    慶大と国立がん研究センター東病院は、年内にも胃がん患者を対象にした臨床研究を始める。患者の体内に潜むがん幹細胞の表面にあり、抗がん剤などに対する防御能力を高める働きを持つたんぱく質「CD44V」に着目した。

    マウスの実験では炎症を抑える薬「スルファサラジン」と抗がん剤を一緒に投与。たんぱく質の働きを抑え、がん幹細胞が死滅しやすくなった。増殖だけでなく、転移や再発も抑えられた。臨床研究ではまずスルファサラジンを投与し、効果や安全性などを調べる。

    阪大では肝臓がんのがん幹細胞を対象にした臨床研究を来年に始める予定。 がん幹細胞表面の「CD13」という酵素の働きを抑える白血病治療薬「ウベニメクス」を、抗がん剤「5―FU」とともに投与する計画だ。マウスの実験では、がんは縮小して確認できなくなった。従来、5―FUを単独で投与し続けると効き目が徐々に薄れてしまうなどの課題があった。

    一方、骨のがんや乳がん でも 「がん幹細胞」を狙った新薬開発へ基礎研究成果が続出している。国立がん研究センターでは骨肉腫のがん幹細胞の内部で働き、病状の悪化を招く微小RNA(リボ核酸)を3種類特定した。このうちの1種類のRNAの働きを抑えた実験では、抗がん剤が効きにくいがん幹細胞に対しても薬の効果が表れた。がん幹細胞の数が大幅に減るのを確認できたのだ。研究チームは動物実験を続け、3年後をめどに臨床試験(治験)を始める計画だ。

    東京大学では乳がん幹細胞が増殖するために作る3種類のたんぱく質を見つけた。これらのたんぱく質はがん幹細胞の近くまで新生血管が伸びるよう促す役割を持っていた。この新生血管の働きを妨げることができれば、がん幹細胞を兵糧攻めにできるとみている。

    これらの新手法に基づく新薬の抗がん効果が確認できれば、がん治療に大きな進展が期待できる。

    2012年9月10日

    30分の重粒子線 がん治療なら安価に

    手術が困難ながんを、副作用少なく効果的に治療できる「重粒子線がん治療装置」の機能を高めた新装置の開発を始めた。新型の重粒子線がん治療装置では個々の患者の治療時間を半分以下に短縮できる。結果として、個々の患者の負担軽減となるだけでなく、施設全体で治療が可能な患者数が増やせる。これは設備の稼働率を大幅に向上できることから、個々の治療費を大幅に下げられる可能性が出てくるのだ。 重粒子線がん治療の効果は絶大であり、副作用の少なさも大きな優位点であったが、しかしながら、設備費が高額であるために治療費も高額で、約300万円という高額治療費が負担できる経済性が問われていた。

    重粒子線がん治療を世界で初めて実用化し、1994年から治療を始めたのは放射線医学総合研究所(千葉市)。一般的な放射線治療と比較して、がん細胞を壊す力が極めて強く、体の深いところのがん細胞にも有効で、しまも、手前の他の臓器への影響=副作用が殆ど無いのが特徴だ。同研究所で年間約700人ががん治療を受けており、他にも粒子線医療センター(兵庫県)、群馬大でも同装置によるがん治療が拡がっている。

    しかし、1回の治療に1時間以上かかる場合もあり、治療時間の短縮が課題だった。治療時間が長引く原因の一つには、現行の治療機器では重粒子のビームの向きを変えられないために、がんの形状や場所によって患者の姿勢を何度も動かす必要があったからだ。これは、体力の衰えたがん患者の体力的な負担でもあった。

    新装置では、超電導磁石で作った強い磁場で重粒子線のビームの向きを自由に変えられるようにする。さらにビームを一筆書きのようにトレースする技術と組み合わせることで、複雑な形のがんでも患者の姿勢を変える必要なく継続して治療できるため、治療時間が半分以下の約30分にまで短縮できることが期待される。

    新型の重粒子線治療設備は、費用が約30億円で3~4年後の完成を予定している。

    新しい治療設備が稼働すれば、治療できるがん患者数が増え、それによって治療費の低下も期待できる。

    高嶺の花であったかもしれない、重粒子線がん治療が、庶民にも身近な治療法として普及する日が近づいてきたかもしれない。

    2012年8月29日

    難治性胆道がん へ治療新薬が承認

    難治性胆道がんの治療に新薬「WT1ペプチドワクチン」の使用が、承認された。

    標準治療に上乗せした臨床試験として、さらに、「中間評価の実施」が条件となっているが、高度医療として承認されたことで、胆道がん治療に新しい選択肢が増えた。

    未承認の抗がん剤新薬「WT1ペプチドワクチン」を用いた新治療法は、継続審議扱いだったが、難治性胆道がんは既存の治療方法が少ないために事前評価が支持された。

    新薬承認は、国立がん研究センター中央病院が申請した「切除不能・再発胆道がんを対象としたゲムシタビン +シスプラチン(CDDP)+WT1ペプチドワクチン併用化学免疫療法とゲムシタビン +CDDP治療の第1/2相試験(高度医療は第2相パートについて申請)」に基づく、治験であるため、今後の効果効能と副作用に関する中間評価が注目される。

    厚生労働省 高度医療評価会議が24日に条件付きで承認した。

    2012年8月22日

    進行肝癌、腎細胞癌の抗がん剤治療の効果を高める

    1日230g程度のグレープフルーツジュースを摂取すると、抗がん剤の効果を高められることが判った。グレープフルーツに含まれている「P450酵素」の働きで、抗がん剤が体内で分解されるスピードを遅らせ、効果が持続できるのだ。そのため、同量の抗がん剤でも効果が高く、抗がん剤の投与量が削減できる可能性があることから、がん患者の副作用も軽減でき、それは治療費を低減できることに繋がる。

    シカゴ医学大学の研究者が実施した実験では、既に有効な治療法が無いレベルまで進行しているがん患者=末期がん患者138人を対象として、3つのグループに分け、

    1. 抗がん剤シロリムスとグレープフルーツジュース
    2. シロリムスと薬物代謝を遅らせるケトコナゾール
    3. シロリムスのみ

    を投与した。

    実験の結果は、グレープフルーツジュースには、腸内酵素を阻害することで、抗がん剤シロリムスなどいくつかの薬が分解されるまでの時間を遅らせる効果が確認されたのだ。効果は数時間程度発揮され始め、数日間連続することも判った。

    シロリムスは、元来は臓器移植の拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤として開発されたが、 進行肝癌、腎細胞癌の治療に効果が期待されている。

    また、グレープフルーツジュースを治療に利用する最大の利点は、過剰摂取のリスクがなく、毒性もないということにある。

    2012年8月9日

    トリプルネガティブ乳がんに新治療法を発見

    乳がんと腎臓がんに新治療法が発見された。

    乳がんと腎臓がんの治療に既存の抗がん剤である「デシタビン」と「ロミデプシン」を併用投与することで期待できることを発表した。

    「デシタビン」はDNAメチル化阻害剤のひとつ、「ロミデプシン」はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のひとつで、血液がん治療剤としてはすでにFDAの承認を受けている。

    研究では、「デシタビン」と「ロミデプシン」の単独使用ではがん細胞は死なないが、2剤を併用することでがん細胞の増殖を止め、がん抑制遺伝子が活性化されることが発見されたのだ。

    がん抑制遺伝子とは、がんの発生を抑制する機能を持つタンパク質をコードする遺伝子。がん抑制遺伝子に欠失、点変異などの変化により機能障害が生じた場合には、直接的に腫瘍化の原因となってしまう遺伝子なのだ。

    併用での実験では、トリプルネガティブ乳がんおよび腎臓がん細胞の異なる細胞株を全て死滅させる「sFRP1遺伝子」を活性化させるという結果が得られたという。

    このがん新治療法だけでなく、 sFRP1遺伝子のほかのがん治療への応用に関しても研究は勧められる予定で、 sFRP1遺伝子を利用した治療法が確立すれば、がん治療は飛躍的に前進する可能性が高い。

    世界中から新しいがん治療法に期待が高まっている。研究は、米国ロチェスター市の総合病院メイヨークリニック(Mayo Clinic)で実施されている。

    2012年8月7日

    がん予防に効果的な食品と抗酸化成分

    青ジソに老化やがんの発生などを予防する成分が含まれていることが判った。

    健康な人間の体内では活性酸素が過剰にならないよう、抗酸化酵素やビタミンなどの働きでバランスが取られている。しかし、このバランスが一旦崩れると「酸化ストレス状態」となることで、細胞が傷つけられて老化やがん、動脈硬化などの原因となっている。

    今回の研究では、果物や野菜などの12種類の成分を詳細に調査した結果、青ジソには抗酸化成分「DDC」が含まれていることが判ったのだ。抗酸化成分「DDC」をラットの細胞に加えると、抗酸化酵素が増加することが確認された。

    抗酸化成分「DDC」の抗がん効果はまだまだ検証する必要があるが、 抗がんサプリメントや がん予防薬開発につながる可能性がある と期待が高まっている。

    青じそ内の抗酸化成分「DDC」を発見したのは、京都大大学院薬学研究科の研究グループ。

    2012年8月6日

    がん増殖、再発を防御できる新薬への画期的な発見

    がん再発の原因となる細胞が特定された。以前から仮設で指摘されてきた「がん幹細胞」の存在を裏付けた画期的な発見である。「がん幹細胞」は、がん全体の成長を促している特殊な細胞で、「がん幹細胞」を除去することで、がんの再発や悪化を防御できる可能性が極めて高い。

    研究では、マウスに腸がんと皮膚がん、脳腫瘍の一種を発症させ、がん細胞の成長過程を分析した。その結果、がん細胞の一部に、がん全体の成長を促している特殊な細胞が存在していることを確認。この細胞こそが、体のいろいろながん細胞の元になる「がん幹細胞」であり、このがん幹細胞を取り除かないと、がんの進行や再発は防げないことが証明されたのだ。

    今後は、がん幹細胞を標的とした新たな治療法や抗がん剤新薬の開発が多いに期待され、がん増殖やがん再発の治療が飛躍的に進展する可能性を秘めている。

    研究は、ベルギーのブリュッセル自由大学、米国テキサス大学のLuis Parada研究チーム、オランダ・ユトレヒトのHubrecht研究所の合同チームが実施し、成果は、科学雑誌「ネイチャー」と「サイエンス」に同時に掲載された。

    2012年8月3日

    肺がん,胃がん,食道がん,前立腺がんに強力な抗がん剤新薬

    既存の抗がん剤に比べて4倍から40倍の強さでがん細胞に働く新薬が実証された。

    抗がん剤新薬「Phenanthriplatin」は、 60種類のがんに対して実証実験がなされ、効果が確認れたのだ。

    実験を実施したのは、米国 マサチューセッツ工科大学。抗がん剤「Phenanthriplatin」は、プラチナをベースにした新薬だ。

    プラチナをベースにした抗がん剤は、プラチナ製剤と呼ばれ、遺伝子DNAに直接作用するためとても強力な抗がん剤として幅広く使われている。プラチナ製剤として実用化されている抗がん剤としては、シスプラチンが最も有名だ。シスプラチンは、米国・カナダで1978年に承認されて以降、1983年にも日本で承認、プラチナを利用した抗がん剤化学療法として最もよく使用されてきた抗がん剤だ。シスプラチンは、精巣腫瘍に最も効果があるとされているが、それ以外にも、リンパ腫、卵巣がんや肺がん胃がん、食道がん、膀胱がん、前立腺がんなど多くのがんの治療にも用いられている。

    今回開発された新薬「Phenanthriplatin」が、既存のシスプラチンよりも効果が高い理由は、シスプラチンよりもがん細胞内に入り易いことに加え、がん細胞がDNAからRNAに転換する遺伝子発現を抑制する効能があるからだ。

    また、シスプラチンには、多くの抗がん剤に発生する副作用である骨髄抑制(血球や血小板の生産不良)はそれほど強く発現しないが、中毒性副作用で腎臓が損傷するリスクや、使用を続けることで腫瘍が薬に対して抵抗力をもってしまうという弊害があった。

    新薬「Phenanthriplatin」は、これらの問題点が改善されている見通しだ。

    つまり「Phenanthriplatin」は、現在に抗がん剤として一般的に使われているプラチナ製剤のシスプラチンを代替し、より効果的にがん細胞を攻撃し、副作用の軽減された新薬となる可能性が高い。さらに、同じプラチナをベースにした抗がん剤を投与しつづけることで腫瘍が薬に抵抗力をもってしまうことを防げぐ効能も期待されている。

    2012年8月2日

    すい臓がんの抗がん剤治療に新手法

    膵臓がんの新しい治療法が開発された。

    膵臓がんの細胞がフコースを活発に取り込む性質であることを利用し、すい臓がんだけに抗がん剤を届ける新投薬法だ。フコース(糖)を利用することで、抗がん剤を健康な細胞ではなく、膵臓がんだけに吸収させるのだ。抗がん剤を包むリポソームという脂質膜にフコースを結合させて抗がん剤を投与することで、がん細胞へ効果的に薬を運ぶことが確認できた。既に、マウスを使った実験で効果を確かめられている。

    この新投薬法によって、抗がん剤の副作用を低減し、さらに抗がん効果を最大化できる。

    膵臓がんへの抗がん剤の新投薬法は札幌医科大の研究グループが開発。米オンライン科学誌プロスワンに発表された。

    2012年7月31日

    乳がん,肺がんの遺伝子変異に画期的な発見

    がん進行の要因となる遺伝子変異を特定する方法が世界で初めて発見された。

    研究は初期段階なものだが、がん細胞が特定の遺伝子が結びついた時に変異の加速が起こり、 がん症状が悪化することが確認されたのだ。

    がんの進行を早める変異をもたらす「がんの協力遺伝子」が特定されただけでなく、さらには、乳がん肺がんを起こす変異に関して、サイトカインシグナル抑制因子(SOCS)を新たに発見した。これまでSOCSをがんと関連付けた研究報告はなく、画期的な成果と位置づけられている。

    これらの遺伝子変異を利用すれば、 がんへの変異を特定するためのコスト低減が可能となり、関連した抗がん剤新薬の開発も期待されている。

    発見したのはシンガポール科学技術研究庁傘下の分子細胞生物学研究所で、研究論文が米国の「ジーンズ・アンド・ディベロップメント」に掲載される。

    抗がん剤新薬は既存薬にペプチドを付加

    効果が薄くなったり、効かなくなった抗がん剤や抗生物質などの再活性化が可能となる発見がなされた。

    土中の微生物が生成する抗生物質「ストレプトスリシン」のメカニズムを解明したことで、この仕組みを応用し、抗生物質の効能を保持しつつ人体などへの毒性を緩和するアミノ酸化合物(ペプチド)の合成に成功したのだ。

    現在、約2万種類の抗生物質や抗がん剤、免疫抑制剤が生産されているが、実用化されているものはわずか1%。残りの99%は毒性が強いなどの理由で、実用化されていない。

    合成に成功したペプチドは、「病原菌に付着し易く、細胞膜を透過し易い」という特徴がある。この性質を利用して、効かなくなった抗がん剤に酵素を用いてペプチドを付加することで、再活性化を図ることも可能となるのだ。

    さらに、今回発見されたペプチドを既存の抗生物質に付加することで、 新薬の発見につながり、抗がん剤の新薬開発にも貢献する見込み。

    解明したのは、福井県立大の研究チーム。研究論文は、科学誌「Nature Chemical Biology」に掲載された。

    2012年7月30日

    抗がん剤耐性の原因特定と新薬開発

    がん患者に抗がん剤が効かなくなる仕組みが解明された。

    抗がん剤が効かなくなる仕組みに関与するたんぱく質を特定することに成功したのだ。

    特定された抗がん剤耐性のたんぱく質は、「TIM-3」。「TIM-3」は、がん細胞の周辺にある樹状細胞がつくる呼ぶたんぱく質。 TIM-3によって抗がん剤の活性を補完する自然免疫が抑制されてしまい、結果として、がん組織が抗がん剤への耐性を獲得してしまうことが解明されたのだ。

    通常はがんを抑制する役割を持つ樹状細胞が、 がん細胞が近くにある場合には、がんの治療を邪魔してしまう可能性もあることが示されたと言える。

    抗がん剤を使用しているうちにがん細胞の増殖を抑える効果が薄れてしまう現象を「抗がん剤耐性」と呼ぶが、抗がん剤耐性はがん治療の妨げとなる。しかし、特定されたたんぱく質TIM-3の働きを阻害できれば、 抗がん剤による治療効果が改善される。既に、マウスの実験によって、TIM-3の働きを阻害で、抗がん剤による治療効果が改善できることが確認されており、新しいがん治療=抗がん剤新薬の開発へ大きな足掛かりが得られた。

    研究は、北海道大学遺伝子病制御研究所のグループが実施し、成果が米科学誌ネイチャー・イミュノロジーに掲載された。

    2012年7月27日

    抗がん剤新薬が肺がん治療の治験最終段階へ

    肺がん治療の抗癌剤新薬の治験が新たに開始された。

    治験が開始されるのは、武田薬品工業と米子会社ミレニアム・ファーマシューティカルズが開発中の抗がん剤「AMG706(一般名:モテサニブ)」。治験の対象とするがんは、「進行非扁平上皮非小細胞肺がん」で、最終段階である第3相(P3)試験をアジア共同臨床として、今月7月から開始した。

    新薬治験の実施主体は、武田薬品の国内子会社である武田バイオ開発センターで、日本だけでなく、香港、韓国、台湾の4つの国と地域のがん患者を対象として実施されている。

    新薬の承認申請の時期などは、まだ「検討中」とされているが、 肺がん患者には治験の好結果と早期の販売開始が待たれる。

    2012年7月26日

    抗がん剤新薬の治験・発売が海外と日本で同時に

    日本での抗がん剤発売を欧米とほぼ同時にする取組みが拡がっている。

    米ファイザーは肺がん用など5種類、スイス・ノバルティスは2種類を数年内に売り出す。日本では臨床試験(治験)に時間がかかり発売が海外よりも新薬の投入が3年近く遅れることが多く、海外で販売中の新薬を日本で使えない「ドラッグラグ」が社会問題になっていた。

    そのため、厚生労働省が治験期間の短縮へ体制を見直す一方で、高齢化でがん患者の増加が見込めると判断した外資の製薬各社が、日米欧でがん新薬の治験を同時並行することで、日本での発売を早める方策を開始したのだ。

    これまで日本での治験は、大規模な医療機関でしか実施できず、新薬の審査人員も不足していた。しかし、ドラッグ・ラグの解消要請を受けて、地方病院でも治験ができるようにするなど厚労省も改善を進めた。

    外資の製薬大手各社が日本での治験を後回しとしてきたが、今後は日本での治験が早まることで抗がん剤新薬の発売も早まっていく見通しだ。

    ファイザーは5年以内に腎細胞がん、白血病、肺がん、リンパ腫、乳がんに対する抗がん剤を日本で発売。それぞれの新薬は、欧米と日本を並行して進めた治験がほぼ後期の段階に入っており、厚労省の承認を得た後に、欧米と日本で同時期に発売される。

    また、ノバルティスは2013~14年に血液がん「骨髄線維症」向けなど2種類の抗がん剤を発売する。新薬の治験は中期~後期の段階。

    さらにスイス・ロシュからは、数年内に2つの乳がん治療新薬が、英グラクソスミスクラインからは筋肉に発生するがん治療薬などが発売さえる。全て、発売時期は欧米と大きな差が出ないとのこと。

    世界最速で進む超高齢化の日本の抗がん剤市場は、 2019年には2010年対比で73%増の1兆1771億円に達する。高まる医療費は社会問題化している一方で、使えるがん新薬が早期に増えることは、がん患者と家族、関係者にとっては朗報と言える。願わくは、拙速な治験・承認で副作用等の薬害問題が発生しないことが望まれる。

    2012年7月25日

    がん化細胞を抑制するDNA因子を特定

    細胞のがん化の原因になる損傷した遺伝子(DNA)の修復機能が解明された。

    酸化や紫外線、放射能などの刺激が原因で、細胞が損傷を受けてDNAの構造が壊れた状態は「DNA鎖間架橋」と呼ばれ、細胞ががん化する原因となる。

    通常は修復機能が働き、がん化を抑制しているが、損傷したDNAが正常に修復されないことで細胞が がん化してしまうのだ。

    しかし、がん化抑制に重要な役割を果たす遺伝子の機能が解明された。

    この成果によって、 がんをはじめとするDNAの修復異常が引き起こす病気への新たな治療法や抗がん剤新薬の開発が予見され、さらに発がんの基礎的なメカニズムが解明に貢献すると期待されている。

    「がん抑制遺伝子」は早稲田大学理工学術院の研究グループが解明した。

    2012年7月24日

    リンパ腫治療新薬が条件付承認

    悪性リンパ腫治療薬の新薬「ADCETRIS(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン)」が、欧州医薬品庁から条件付ながらも販売承認を推奨する見解を取得した。

    ADCETRISは、古典的ホジキンリンパ腫と全身性未分化大細胞リンパ腫を治療対象としており、それぞれのリンパ腫に発現するCD30抗原を標的とした抗体薬物複合体だ。今回、条件付き販売承認を推奨された効能・効果は、下記の2点。
    (1)自己幹細胞移植後、または、自己幹細胞移植や多剤併用化学療法が適さず少なくとも2種類以上の治療を実施した、成人の再発・難治性のCD30陽性ホジキンリンパ腫
    (2)成人の再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫

    再発・難治性のホジキンリンパ腫の治療においては30年以上にわたって新薬が承認されておらず、新薬が待望されていた。 ADCETRISは再発・難治性のホジキンリンパ腫および全身性未分化大細胞リンパ腫の治療に貢献すると期待されている。

    「 条件付き販売承認」とは、生命を脅かす病気に対して有望と考えられる薬剤を、患者さんへのベネフィットが正式に証明される前であっても、予備的証拠に基づき承認し販売可能とするEMAの制度である。

    今後、新薬「ADCETRIS(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン)」は、欧州委員会(EC)で審議され、正式な承認を取得した後、まずは欧州27カ国で販売可能される予定。

    2012年7月20日

    がん細胞激減の脳腫瘍抗がん剤新薬

    悪性脳腫瘍「グリオブラストーマ」の再発を抑える効果の抗がん剤新薬が、マウス実験で発見された。

    脳腫瘍の中でも「グリオブラストーマ」は治療が困難とされており、外科手術、放射線治療や抗がん剤で初期治療が成功しても、がんが再発する場合が多いことが問題だった。

    しかし、腫瘍を作り出すがん幹細胞の維持に必要な分子に着目し、この分子の機能を抑える効果のある薬剤をマウスと投与したところがんが抑制されたのだ。

    実験では、腫瘍を脳に移植したマウスに対して、この抗がん剤新薬を5日間投与した。すると、腫瘍の中のがん幹細胞は10分の1以下に大幅に減少した。さらに、がん幹細胞を脳に移植したマウスでは、10日間の薬剤投与によって、 がん幹細胞を10分の1~100分の1以上に激減させる効果があったのだ。しかも、脳の機能には影響が無く、生存期間も延長することができた。

    脳腫瘍の抗がん剤新薬は、山形大と国立がん研究センターの研究チームが開発し、今後は治験への期待が高まっている。

    研究論文は、英科学誌サイエンティフィック・リポーツへ発表された。

    2012年7月19日

    最終治験が開始される乳がん治療新薬

    乳がん、非小細胞肺がん卵巣がん、胃がん治療用の抗がん剤新薬「NK105」が、転移・再発乳がんを対象に実用化の最終段階である第III相比較臨床試験を開始した。

    既存の卵巣がんや非小細胞肺がん、乳がん、胃がんの治療向け抗がん剤 「パクリタキセル」が世界的に普及しているが、抗がん剤自体の副作用だけでなく、製剤化の際に使うアルコールを基にした特殊な溶媒が原因の副作用も生じる欠点があった。

    新開発の抗がん剤新薬「NK105」は、「パクリタキセル」を高分子ポリマーのカプセルに封入したミセル化ナノ粒子製剤であるため、課題であった副作用が大幅に軽減できる特徴がある。

    乳がん向けの新薬として承認後は、卵巣がん、肺がん、胃がんへの新薬申請・承認も順次に実施される見込みだ。

    2012年7月18日

    肺がん原因遺伝子を新発見

    肺がん患者の大部分を締める肺腺がんの発症に関わる2種類の遺伝子が新たに発見された。過去の調査でも2種類の肺腺がん発症遺伝子が発見されており、今回で発見された肺腺がん遺伝子は合計4種類となった。

    発見したのは、国立がん研究センターと理化学研究所のグループ。約2万人を対象としたゲノム(全遺伝情報)解析で導き出した。

    ゲノム解析の実施対象となったのは、日本人の肺腺がん患者6029人と発症していない1万3535人。その結果、すでに発見されている2遺伝子以外にも、「BPTF」と「BTNL2」という遺伝子領域で肺腺がん患者に特徴的な塩基配列が見つかったのだ。 BPTFは細胞のDNAの複写機構に、BTNL2は免疫の制御機構に関わる遺伝子として知られている。

    肺がんの一種である肺腺がんの発症には、喫煙以外に遺伝的な要因が深く関与しているとされており、肺腺がんの原因解明へ期待が大きかった。 がんの原因となる遺伝子が特定されたことで、遺伝子標的薬の開発が進展し、肺腺がん特効薬が開発される可能性が高まってくるだろう。

    新ペプチドを活用するがん細胞にだけ効果の新治療法

    副作用の少なく、がん細胞だけに効く抗がん剤新薬へ、大きな発見がなされた。

    開発されたのは、がん細胞だけに吸収される物質「CPP44」。 CPPはペプチドの一種だが、従来のペプチドは、がん細胞、正常細胞の区別無く染み込む性質だった。しかし、新開発されたCPP44ペプチドは、肝臓がんと白血病のがん細胞にのみ大量に吸収される性質を持つ。肝臓がん白血病以外の細胞にはほとんど吸収されないのだ。このような性質のペプチドが人工的に作られたのは世界で初めて、この性質を抗がん剤へ流用することで、副作用を低減し、効果を画期的に高められる期待が高まっている。

    実施されたマウス実験では、腫瘍の大きさが半分以下になるの成果が確認された。

    これまでは、副作用の多寡が抗がん剤の最大の問題だったが、このペプチドを活用するできれば、がん細胞にだけ効果のある抗がん剤の開発が可能になる

    つまり、副作用が少なく、効果の高い新しい抗がん剤が続々と開発されうるのだ。

    がん細胞だけに効くペプチドを世界で初めて開発したのは、愛知県がんセンター研究所と琉球大の研究グループ。論文は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された。

    2012年7月17日

    活性酸素を利用する新しい がん治療法

    がん患者の体内に活性酸素を過剰に蓄積させて、がん細胞の増殖を抑制する新しいがん治療法が開発された。

    新しいがん治療法として注目されているのは、活性酸素の毒性を逆手に取り、目的の部位だけに活性酸素を蓄積させることでがん細胞の増殖を防ぐ治療法。

    通常では、活性酸素の蓄積は細胞の老化などを引き起こすため、体内には活性酸素を取り除く仕組みがある。一方で、がんの増殖にはがん細胞へ栄養を供給する新生血管が関与していることが知られている。この新生血管では活性酸素を消去する役割を果たす「毛細血管拡張性肉芽腫変異(Atm)遺伝子」が活発に働いていることを発見したのだ。そして、Atm遺伝子の活性化を阻害すれば、新生血管に活性酸素を蓄積させ、がん細胞への栄養を遮断するがん増殖抑制法とできる。

    新治療法では、がん細胞に酸素や栄養を供給する新たな血管網(新生血管)を維持できないよう遺伝子操作した。既にマウス実験では 新治療法によるがん増殖の抑制に成功している。

    新治療法を開発したのは、慶応大医学部で、米科学誌ネイチャー・メディシンへ発表した。

    この研究チームは遺伝子操作と同じ効果がある化合物の開発に取り組んでおり、成功すればがん組織だけ退治する副作用の少ない新薬ができると期待されている。

    2012年7月13日

    血液1滴で大腸がんを早期発見する新検査法

    1滴の血液から早期の大腸がんをも発見する新手法が開発された。

    大腸がんは食事の欧米化などが原因で増加傾向であり、国内では年間約4万5千人(2010年)が死亡。肺がん、胃がんに続いて、日本人のがんによる死因の3位となっている。

    しかし、早期の大腸がんは治療できる可能性が高いものの自覚症状が無く、既存の検査法では便を採取して血液の有無を調べたり、がんが出す血中のタンパク質を調べたりしていたが、いずれもがん発見の精度は低いものだった。

    新開発された新手法では、「メタボロミクス」と呼ばれる代謝物質の解析法によって、大腸がん患者の血液中に多いアスパラギン酸など4種類を数式化して判定する。従来の方法では診断が難しかった早期の大腸がんでも見分けられるため、大腸がんの早期発見早期治療が実現できる可能性が高い。

    検証実験では、大腸がん患者60人と健康な60人とを比べ、アミノ酸の一種「アスパラギン酸」など4種類の物質について、いずれもがん患者の方が平均2~3倍多いことを発見した。

    さらに、別の大腸がん患者と健康な人のそれぞれ約60人で検証すると、従来のがん指標となるタンパク質では早期がんの1割程度しか診断できなかったが、4種類の物質を使った診断法では8割以上が診断できたのだ。非常に高い検査精度だと言える。

    今後は発見された4種類の物資を使ってさらに簡単に診断できる機器の製造・実用化が予定されており、その後には、胃がんや膵臓がんなどの早期診断法の開発が期待されている。

    神戸大大学院医学研究科のグループが開発に成功し米科学誌プロスワンに発表した。

    すい臓がんの新治療法はフコース利用

    治療が難しい膵臓(すいぞう)がんの患部に抗がん剤を効率よく届かせる新治療法が開発された。

    新治療法では、フコースという糖を利用することで、抗がん剤を健康な細胞ではなく、がん細胞を狙って届ける。 膵臓がんの細胞がフコースを活発に取り込むことに着目したのだ。フコースを抗がん剤を包むリポソームという脂質膜に結合させて、がん細胞へ効果的に薬を運ぶことに成功した。

    開発したグループによると、新治療法では抗がん剤の薬の量や副作用を大幅に減らせる。既にマウスを使った実験で効果が検証されたため、今後は臨床試験を進める予定。さらに、胃がんや大腸がん、胆道がんなどの抗がん剤治療にも応用が可能で期待は高まっている。

    この膵臓がんの新治療法を開発したのは、札幌医科大の研究グループ。 膵臓がんは初期には自覚症状がなく、転移しやすい難治性のがんであり、国内の推計死者数は年間約2万2千人を超えており、抗がん剤新薬、新治療法のニーズが高い。

    研究成果は、米オンライン科学誌プロスワンへ発表された。

    2012年7月12日

    酵素を阻害してがん細胞を抑制する新薬

    がん細胞の転移に大きな役割を果たす酵素が特定された。

    発見・特定された酵素は、「ADAM28」。 ADAM28は肺がん中の細胞などで強く働いている酵素で、 ADAM28が血液中のVWFという分子を分解する。その結果、がん細胞はこのVWF分子が引き起こすはずの細胞死を免れ、自然死(アポトーシス)しないことが確認された。 がん細胞は通常、血管に入るとほとんどが死滅するが、一部のがん細胞が生き残ってしまうことが原因となって、他の臓器にがん転移していた。

    マウスによる実証実験では、酵素ADAM28の働きを阻害すると、がんの転移を抑制できることが確認できた。この発見から、がんの増殖/転移を抑制できる有望な抗がん剤の開発が期待される。

    当該研究の成果は、慶応大医学部の研究チームが米国立がん研究所雑誌へ発表した。

    2012年7月11日

    抗がん剤副作用被害は救済対象外

    抗がん剤の副作用被害に対する公的な救済制度の創設が先送りとなる可能性が高まっている。

    抗がん剤の副作用被害救済制度」は、抗がん剤イレッサの副作用で被害を受けた患者遺族の訴訟を通じて、患者側から要望され、かつ、裁判所の和解勧告を拒んだ際に国が制度創設の検討を表明していた。

    抗がん剤以外の医薬品に対しては、薬害・副作用で重い障害を負ったり死亡したりした場合に、医療費などが支払われる公的な制度があるが、 抗がん剤は対象外であったために、別の救済制度の創設が強く要望されていたものだ。

    しかし、重い副作用が高い確率で起きることを前提として投与する抗がん剤に対して、制度の創設は難題が多く指摘された。「制度設計を急ぐと、かえってがん医療を委縮させてしまう」という慎重論は、国と製薬会社側の論理であり、とてもがん患者側の心情を汲んだものではない。

    最低限でも「継続検討」として、早期の制度創設が期待される。

    2012年7月10日

    がん細胞の防御力を高める物質発見から新薬へ

    がん増殖を促す たんぱく質が特定・発見された。

    発見された たんぱく質は「NRF2」。そもそもNRF2は、細胞をストレスから守る働きをするたんぱく質だが、がん細胞の中では 糖やアミノ酸の代謝を変化させることで、がん細胞の増殖を促していることが判明したのだ。

    東北大学大学院医学系研究科のグループが、肺がん細胞内のDNAを解析することで、判明した。その結果、NRF2が糖類のグルコースやアミノ酸の一種であるグルタミンの代謝に影響を与え、代謝の過程を変化させることで、がん細胞を増殖させることが実証されたのだ。

    さらに、がん細胞をマウスに注射した実験では、NRF2を減らす試薬を投与したマウスは、 NRF2減の試薬を投与しないマウスよりも がん細胞の増大が3分の1程度に抑制された。

    以前から、NRF2が抗がん剤や放射線照射への抵抗性を持ちがん細胞の防御力を高めてしまうことは既知だったが、今回の研究で、NRF2が がん細胞の増殖自体に関連していることが確認された。

    この発見により、がん細胞の増殖や悪性化の一因となる代謝の仕組みが解明され、新がん治療法、新薬の開発が進むものと期待されている。さらに、がん治療にとどまらず、NRF2を活性化させることで再生医療への応用も模索されている。

    研究は米医学誌キャンサー・セルに発表された。

    2012年7月5日

    紅茶,コーヒー,チョコレートの皮膚がん予防効果とは?

    皮膚がんの予防にカフェインが効果的であるとの研究報告が発表された。コーヒー、紅茶、チョコレートに含まれるカフェインは同様のがん予防効果があるのだそうだ。

    研究では、20 年間以上に渡る男女 112,897 人を対象とした経過観察を分析した。すると、一日に 2 杯以上のコーヒーを飲む人は飲まない人と比較して、基底細胞がんの発症確率が 20 %も低いことが判明したのだ。カフェインが含まれれば同様のがん予防効果が期待できるため、コーヒーだけでなく紅茶やコーラ、チョコレートなどの食品でも予防策としては有効だ。ただし、カフェイン成分を含まないカフェインレスコーヒー(デカフェコーヒー)には がん予防の効果は期待できない。

    皮膚細胞のDNAが紫外線が原因で損傷を受けると皮膚がんを発症しやすくなるのだが、カフェインを食すると損傷を受けがん化してしまった皮膚細胞を殺す作用効果があると推論されている。

    研究成果は、ハーバード大Jiali Han 准教授らが発表した。

    2012年7月4日

    国ごとに違うコーラの発がん性

    広く普及している炭酸飲料であるコカコーラに発ガン性物質が含まれていることが指摘された。

    コカコーラに含まれている発ガン性物質は、4-メチルイミダゾール(4-MI)。この物質は、コカ・コーラのカラメル色素を製造する工程で砂糖,アンモニア,亜硫酸塩が高圧・高温となった化学反応で生成される化学物質である。

    発ガン性物質4-MIの含有量は、コカ・コーラが販売される国で異なり、日本のコカコーラは、355ml換算で72マイクログラムだが、米国カリフォルニア州で販売されているコカコーラは4マイクログラムと、約18倍もの差がある。最も汚染されていたコカ・コーラは、ブラジルで販売されていた。

    米国カリフォルニア州で販売されるコカコーラの4M-1が最も少ない理由は、米国カリフォルニア州には4-MIを含む食品の規制があるため、規制対応で発ガン性物質の量を抑えた製品となっている。

    ただし、コカコーラの本当の問題点は、この発ガン性物質よりも、大きな健康リスクを伴う大量の糖分だ。これは、コカコーラだけでなく糖分を多く含む清涼飲料水の全てに共通する課題であり、清涼飲料水の飲み過ぎに警告が発生られている。

    コカ・コーラが含む発がん性物質に関しては、アメリカの公益科学センター(CSPI Center for Science in the Public Interest)が発表した。

    2012年7月2日

    肝がん新薬ペプチドワクチンの治験

    肝細胞がん新薬となるペプチドワクチン「ONO-7268MX1」が、第I相臨床試験の治験を開始する。

    肝細胞がんは、日本での原発性肝臓がんの90%以上を占める。この肝臓がんで死亡する日本人は年間約3万人と多く、治療としては、手術による肝切除、ラジオ波焼灼療法や経皮的エタノール注入療法などの手術療法が中心。さらに化学療法や放射線療法での治療も試行されているが、効果は思わしくない。 肝臓がん、肝細胞がんの新たな治療法、新薬が待望されている。

    治験が開始される肝臓がん新薬は、既存の標準療法に対して不応あるいは不耐の肝細胞がん患者を対象としている。

    新薬の効能は、 肝細胞がんに特異的な免疫細胞である細胞傷害性T細胞を誘導することで、 がん細胞を叩き、抗腫瘍効果を発揮する。

    臨床試験では新薬「ONO-7268MX1」の安全性と免疫反応も検証される。

    2012年6月29日

    すい臓がんの抗がん剤新薬

    すい臓がん治療の抗がん剤新薬「ナノプラチン」の治験が順調に進められている。

    すい臓がん新薬「ナノプラチン」は、定評のある抗がん剤「シスプラチン」をミセル化することで効果を高めた新しい抗がん剤だ。多様ながんの標準治療薬と評価が高い「シスプラチン」は、すい臓がん肺がん卵巣がん子宮頸がん、膀胱がん等の治療に効果が高い。この「シスプラチン」をミセル化=「分子を集合させた塊状に特殊加工」することで、抗がん剤が体外に長く留り継続的に効果が発揮されるようになった。

    すい臓がん新薬「ナノプラチン」の臨床試験は、すい臓がん標準治療薬の「ゲムシタビン」との併用療法で実施されており、現在は、アジア地域で第2相臨床試験へ進んでいる。

    すい臓がん新薬は患者待望であるため、新薬「ナノプラチン」の開発成功が待望されている。

    2012年6月28日

    レーザーで活性酸素を発生させる がん治療法

    患部に白血球を集めがん細胞を撃退

    光線力学療法は、がん治療などに使われている治療法。PDTとも呼ばれ、光線力学的療法ともいわれる。 がん患者に対して、がん細胞に集まる性質のある薬品を投与し、弱いレーザー光を照射することで投与した光感受性物質から活性酸素を発生させ、この活性酸素によってがん細胞を駆逐させる治療法。

    低出力のレーザーを使うため、正常組織へのダメージを最小限に抑えることが出来る。早期の食道がん胃がん・子宮頸がん・加齢黄斑変性に保険適用されている。内視鏡で病巣が確認できることが治療の条件。

    近年は発生する活性酸素が感染症への治療効果も持つことが発見されて、適用範囲が増えつつある。

    2012年6月27日

    全方向から患者にX線を当てる高精度がん治療

    初期のがんを3ミリ径のピンポイントで狙う、最先端のがん治療技術が開発された。

    北海道大学が中心となって開発を進めてきた最先端の高精度X線がん治療機は、照射されるX線が3mmと従来の半分になっている。これによって、従来の直径6mm程度のX線ビームではがん細胞の周囲にある正常な組織を傷つけたが、新型機であればピンポイントでX線を狙い撃つことが容易になった。

    さらに、照射機に装着されたアームで、上下左右前後の周囲の全ての方向から患者にX線を当てることが可能であるため、患者はあおむけの状態のままに体を動かさず治療を受けられ、負担が軽い。

    従来の放射線治療は、35回も治療をする必要があったが、この新型の高精度X線治療機ならば、1cm程度のがんに対して、がん部位によらず約15分で治療が完了するという。

    世界で初めての新型放射線治療機器は、海外の医療機関で臨床実験が進められる予定で、数年後には入院せずに切らないがん治療ができるだろう。

    2012年6月26日

    肝臓がん、すい臓がん、胃がんの最新治療法のメリットと問題点

    前立腺がんでは保険適用になったロボット手術は、他のがん手術に対しても合併症リスクが低下できることが分かってきた。そのため、胃がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、すい臓がんに対しても、ロボット手術で施術される症例が増えている。

    例えば胃がん手術の場合、胃がん患部周囲のリンパ節を切除する際に電気メスの熱が原因で、膵臓が損傷を受け、て炎症を起こしたり、膵液漏になることがある。しかし、ロボット手術で膵液漏が発生するリスクは激減できる。執刀医が3次元画像で奥行きを把握しながら切除できるため、周囲の臓器の損傷を最小化できるのだ。

    従来の手術法では一定の率で発生した合併症を、ロボット手術ではかなり減らせることが患者のメリットなのだ。問題は、自由診療の扱いとなるため、入院,検査の費用も全額が患者負担となり、総額で300万円以上の治療費が必要となってしまう。

    今後は、前立腺がんだけでなく、胃がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、すい臓がんへの保険適用が待たれる。

    2012年6月25日

    治療パッチを3時間貼る新がん治療法

    皮膚がん治療に、パッチを貼るだけの新しいがん治療法が開発された。全インド医科学研究所が発表した。

    新治療法は基底細胞がんに適用される。基底細胞がんは、皮膚がんの中でも死の危険性は低いものの、患者数が最も多い皮膚がん。治療方法は放射性リン(32P)を使用したパッチを貼るだけで、手術や放射線照射などと比べて非常に安価で入院の必要もない。貼るだけなので、傷も残らない。

    臨床実験では、顔に基底細胞がんのできた被験者10名を対象に実施された。皮膚がん患者の患部に治療パッチを3時間貼り、同様の処置を4日後と7日後に繰り返した。結果として、3か月後の検査では全員の基底細胞がんが消滅した。しかし、6か月後の再検査では、2名の被験者が再発した。

    今のところはまだ実験が小規模なので、実用化までに広範囲な研究が必要とされている。悪質な皮膚がんとされるメラノーマ治療への展開が期待される新治療法だ。

    2012年6月22日

    肺がん、乳がんの転移を5分の1に抑える新薬

    がん細胞の転移に重要な役割を果たす酵素が特定された。

    ADAM28という酵素が肺がんや乳がんの細胞で強く働いているおり、がん転移の際に働くため、この酵素の抑制で がん転移が抑制できるという。マウスの実験でこの酵素ADAM28の働きを阻害したところ、がん転移を劇的に減らせたのだ。

    がん細胞は通常、血管に入るとほとんどが死滅するが、一部のがん細胞が生き残って他の臓器に辿り付くことでがんが遠隔転移してしまのだ。しかし、遺伝子操作で酵素ADAM28が働かないようにした肺がん細胞をマウスに注射すると、通常の肺がん細胞を投与した場合に比べ、肺への転移が6分の1に抑えられた。また、酵素ADAM28が働かないようにした乳がん細胞を乳房に注射した場合、脳や腎臓、肺、肝臓などへの転移も5分の1程度に抑制できた。

    近い将来に、ADAM28の働きをコントロールする抗がん新薬が開発されることで、がんの転移を抑制できるようになる可能性が高まっている。

    研究成果は、慶応大医学部のチームが米国立がん研究所雑誌に発表した。

    肝臓がんの再発確率は

    肝臓がんは非常に再発しやすい、やっかいながん。完璧な治療で完快を得ても、年に15~20%という高い確率でがんが再発する。5年間での再発率は約80%にもなるのだ。

    手術での切除や、熱してがん細胞を死滅させるラジオ波焼灼(しょうしゃく)術でがんを完全に取り去っても、残った肝臓はすでに慢性の肝臓病が進行して肝がんができやすい状態になっている。そのため、肝臓の他の場所にがんが再発し易いのだ。

    肝臓がんの治療は、一旦克服した後の再発予防や最も重要なのだ。残念ながら肝がんの再発を直接防ぐ治療はまだ無い。

    しかしウイルスを抑えることは肝臓の働きを改善しがんの再発予防に効果的だ。B型肝炎やC型肝炎では一度 肝臓がんができた後でも、ウイルスを抑制することで、長期的な再発予防効果が得られる。

    将来的には、肝臓がんの再発を抑える有望な薬が開発中なので、新薬の登場を待ちたい。

    それまでは、肝臓がんの治療後は50%のがん再発を前提に、定期的な血液検査とエコー、コンピューター断層撮影装置(CT)などの画像診断が不可欠だ。 がん再発を早期に発見することで、再度の根治的な治療が可能となる。

    肝臓がんは、慢性肝炎・肝硬変に対する治療が進歩したことで、発症が回避できるようになった。また早期発見技術が増え、その後のがん治療技術も進展し、さらに肝がん根治後の肝炎・肝硬変の治療と画像診断を繰り返すフォローの徹底によって、治療成績が飛躍的に向上している。

    50%のがん再発率にも恐れる必要は無く、治療が可能だと信じて、検診を欠かさないことだ。

    2012年6月21日

    肺がん新薬は2週間で転移がんが消失

    日本人がかかるがんの中で最も死亡率が高い「肺がん」。
    「肺がん」と喫煙との関係は指摘されていがタバコを吸わない人にも発生する「肺腺がん」が増えている。肺の奥にできる「肺線がん」は「肺がん」のほぼ半数を占める。初期症状が少なく、喫煙の習慣がない人や女性にも多く発症するがん。

    治療は、抗がん剤による化学療法が中心だが、2012年3月「クリゾチニブ」という飲み薬の新薬が承認された。「クリゾチニブ」は肺腺がんの中でも、特定の遺伝子変異のあるタイプの患者に高い治療効果が得られる。

    43歳の男性は、「肺腺がん」が発見されてから4年間抗がん剤治療と再発を繰り返してきた。しかし、抗がん剤「クリゾチニブ」を飲んで1週間で元気になり、会社にも毎日行けるようになった。 肺以外にも肝臓や骨、首などに転移がんが見つかっていたが、抗がん剤「クリゾチニブ」を飲んで2週間後には、黒く映っていた転移がんの多くが消えていた。

    「クリゾチニブ」は「分子標的薬」と呼ばれるもので近年、世界中で研究が進んでいる。

    一般的な抗がん剤は、体全体の細胞を攻撃すると同時にがん細胞の増殖を抑えダメージを与えるのに対し、「分子標的薬」はがんの原因となる遺伝子を突き止め、直接その細胞が死滅するように促す抗がん剤。肺がんだけでなく、白血病や乳がん大腸がんなどの治療に対しても開発が進んでいる。

    抗がん剤「クリゾチニブ」は、日本の研究者が「ALK」というある特定のタイプの「肺がん」の遺伝子変異を発見し、ネズミを使った実験で同じタイプのがんを縮小させることに成功した実験結果から誕生した。

    しかし、分子標的薬には注意点もある。

    世界初の肺がん分子標的約イレッサは間質性肺炎と呼ばれる重い副作用を発症する患者が多く発生し、遺族が国や製薬会社などを訴訟したのだ。承認から2年後の現在では、「イレッサ」は「EGFR」と呼ばれる遺伝子変異のある患者にのみ治療効果があることが判明したため、まず患者の遺伝子変異の有無を調べてから、イレッサでの治療方針を決めるように改良された。

    肺がん新薬として脚光を浴びる「クリゾチニブ」も効果が期待できるのは、「ALK」という遺伝子の変異を持つ肺がん患者だけなのだ。この治療適合性があるのは、「肺腺がん」患者のうち約5%。若い世代やたばこを吸わない人に多いとされている。

    今後、効果の高い分子標的薬は次々と開発されるが、がん患者への適合性を遺伝子レベルで事前評価するオーダーメード医療、個別化医療の概念が不可欠となるだろう。

    2012年6月20日

    悪性リンパ腫の抗がん剤治療を事前評価

    血液のがんである悪性リンパ腫。
    その中のNK細胞リンパ腫に対しては、通常の抗がん剤がほとんど効かないことが問題だった。しかし、5種類の抗がん剤を投与する「SMILE療法」が、NK細胞リンパ腫に対して治療効果が高いことが判明。さらにその治療効果の大小を事前予測する手法が解明された。白血球の減少や肺障害などの副作用が出ることがあるが、頻度が少ないことが特徴だ。

    リンパ腫の腫瘍(がん細胞)に含まれるウイルスが血液中に出した遺伝子の量が少ないほど「SMILE療法」のNK細胞リンパ腫に対する治療効果が高いことが判ったのだ。しかも、その適正が合致すると副作用も少ないことも確認された。

    名古屋大医学部の研究チームが解明し、米専門誌に発表した。

    陽子線がん治療の新型システムを承認

    副作用が少なく治療効果の高い次世代のがん治療、陽子線治療システムの新型機が米国FDAの承認を取得した。

    既存の陽子線治療は、広大な設置面積が不可欠で、膨大なコストが問題だった。

    新型の陽子線治療システムは、設置面積を著しく低減することに成功し、同時に信頼性を改善、既存のエックス線放射線治療システムと類似した管理方法や操作方法を用いる事で、経済性、操作性を向上した。そのため、導入コストや運営コストのが大幅に低減されたのだ。

    小型で高精度で強力な陽子線ビームががんを治療する新型の陽子線治療システム「MEVIONS250」は、米国のメビオンメディカルシステムズ社が開発・販売している。今後は2014年までに、世界で12台以上のMEVIONS250 陽子線がん治療システムが出荷される予定で、ロバートウッドジョンソン大学病院(ニュージャージ州)とオクラホマ大学(オクラホマ州)への搬入が進行中だ。その後、フロリダやカリフォルニアの病院へ順次に導入が進められる。

    高精度で切らないがん治療は今後ますます普及と低価格化が望まれる。

    2012年6月19日

    食道がんの原因と治療法

    強いアルコールを飲む人が食道がんを発症しやすい理由は、アルコールを飲むと発がん性物質であるアルデヒドが息に出るからだ。そのため、喉頭がん、咽頭がん、食道がんになるリスクが高いのだ。

    種類を飲むと顔が赤くなる人ほど、アルデヒドの処理効率が悪く、がんリスクが高いことが判っている。

    食道がんが進行している場合の自覚症状としては、物が飲み込みにくい、引っかかるという症状が出る。食道がんの検査は、食道に色をつける内視鏡色素散布法などを受けることで、早期発見が可能だ。

    食道がんの治療法は、
    (1)内視鏡での手術
    (2)開胸での手術
    (3)放射線や抗がん剤での治療
    などで対処される。

    早期の食道がんは、手術でがんを切除する治療法が多い。開胸で食道がん手術をした場合には、入院から退院までの目安は約1カ月。もしも、がんに広がりあった場合には、手術後に放射線治療を追加するケースもある。体力の回復も考慮すると、仕事復帰までの目安はやはり数カ月間が必要となる。

    2012年6月18日

    抗がん剤の有効性・副作用の確認が10倍精度に

    がん治療向けの新しいDNAチップが2013年発売される予定。

    鋼材加工で培った表面処理技術を転用することで、 がんの有無を調べる反応光が従来品より10倍以上鮮明に映る新しいDNA検査技術が開発された。新検査法では抗がん剤の副作用の有無なども高精度に調べられるだけでなく、チップサイズが小型化されて臨床現場で使い易くなっている。

    開発した東洋鋼鈑では、 2013年を目標にがんの診断や抗がん剤の有効性・副作用の確認などに使うDNAチップ事業に参入する予定。

    2012年6月15日

    手術不可の肝臓がんを治す

    慢性肝炎や肝硬変に最善の治療を施しても肝臓がんを発症する症例は多い。

    肝臓以外の他の臓器は普通、がんの進行度により治療の方法が決まるが、肝臓がんは進行度だけでは治療法が決められない。肝臓が元気な状態であれば、大きながんでも手術で切除できる。しかし、肝臓がん患者の多くが、がん患部だけでなく肝臓全体が弱っていることが多く、その場合は手術が困難となる。肝臓全体の状態が輪悪い場合には、がんが非常に小さくとも治療ができないこともあるのだ。

    肝臓がんを完全に治す=根治するには、手術で切除する以外に、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術という治療法が主流になりつつある。

    ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術は、いわゆる切らずに治す手術の一種で、 がん患部に針を刺してがん細胞を殺す経皮的な治療方法。肝臓に約1.5ミリ太さの電極針を刺し、がん細胞を100度に熱して死滅させる。ラジオ波焼灼術は、肝臓全体の状態が悪くても治療が可能だが、大きさが3センチを超える がんの治療は難しい。

    手術もラジオ波焼灼術が行えない場合には、塞栓(そくせん)療法、抗がん剤による化学療法が選択される。塞栓療法とは、がん患部に栄養を送っている肝臓の動脈を閉じることで がん細胞への栄養を遮断し、兵糧攻めでがんを壊死させる治療法。

    さらに先進医療としては、放射線の一種の重粒子線を用いてがん細胞をピンポイントに死滅させる治療が注目を集めている。重粒子線がん治療は、副作用の少なく、治療効果の高い近未来の治療法だが、導入施設がまだ少なく、治療費が約300万円と高額であることが問題だ。

    近年の肝臓がんの治療成績は大きく改善されている。がんが早期に診断されるようになり、抗ウイルス薬など肝炎・肝硬変の治療効果が向上したことが貢献しているのだ。さらに、新しい治療薬の開発が相次いでいることで、肝炎が撲滅できれば肝臓がんの撲滅も近いと見られている。

    2012年6月13日

    声帯がんの早期発見法と最新再生法

    声帯がんを内視鏡下手術で声帯を切除すると、強い音声障害が残ることが多い。

    しかし、声帯の上側に位置する「仮声帯(かせいたい)」を用いた新たな再生法により、仮声帯が声帯の代わりになる治療法もある。また、頬の脂肪を用いた注入による声帯再生を行うことも可能だ。

    早期の声帯がんは、他のがんと同様に症状が軽微で、診断も難しいことが問題だった。そこで開発されたのが、「ストロボスコープ」による声帯がん診断法。「ストロボスコープ」では、瞬間ごとに発光する光源を利用して声帯の動きを見ることができる。1秒間に100~1000回の超高速震動の声帯が、スローモーションのようにゆっくりと映し出され、その動きの変化によって約9割に対して声帯がんか否かの診断が容易に可能になった。

    さらに特殊な光源を用いた「NBI」という診断法を取り入れると、組織や血管が鮮明に浮かび上がるために声帯がんの発見は確実となる。。ストロボスコープとNBIを組み合わせることで、前がん病変などの小さながん(腫瘍)を早期がんの状態で発見するべく、研究が進められている。

    2012年6月12日

    がん細胞だけ死滅する仕組みを解明

    がん細胞だけを死滅させる仕組みの一端が解明された。これによって副作用の少ない新薬の開発が期待される。

    愛知県がんセンター研究所が、人間などの哺乳類の細胞にある突起物「一次線毛」の働きを利用し、がん細胞だけを死滅させる仕組みを解明したのだ。

    細胞の一次線毛は細胞に一つずつ存在しており、細胞分裂を起こす時は隠れている。アンテナを伸ばすように一次線毛が細胞から突き出ると、細胞分裂が停止するのだ。しかし、この一次線毛はがん細胞には存在せず、がん治療への応用が期待されていた。

    研究グループでは人間の子宮頸(けい)がんの細胞と正常な網膜細胞をそれぞれ培養し、一次線毛の働きを抑え、細胞分裂するのに必要な酵素「オーロラA」をそれぞれの細胞から取り除き、2、3日置いて観察した。その結果、がん細胞の方は中途半端に細胞分裂が進み、異常な状態で停止した上、自浄作用が働き死滅することが確認できた。一方、正常な細胞は一次線毛が飛び出し、正常な状態を保ったまま細胞分裂が停止したという。

    研究成果は米科学誌「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」に掲載。

    肺がん新薬で9割が縮小効果

    肺がん治療の新薬は「ザーコリ(一般名クリゾチニブ)」を、効果の高い患者だけに投与するための新しい検査手法が開発された。

    「非小細胞肺がん」の患者のうち、ALK融合遺伝子があるのは約3%。新薬ザーコリはこのALK遺伝子を持つ肺がん患者には著しい効果を示すが、ALK融合遺伝子の無い患者には効果が無い。

    ALK遺伝子を持つ肺がん患者ならザーコリによる治療で9割以上でがん(腫瘍)が縮小するが、 ALK遺伝子の無い肺がん患者には、間質性肺炎や吐き気などの副作用で負担が増えるだけなのだ。従い、治療前に抗がん剤の適合性、つまりは「標的=ALK遺伝子」の有無を調べる正確な診断が必要となっていた。

    しかし、従来の検査法はがん細胞の塊(組織)が必要で、腫瘍の位置が分かりにくい肺がん患者の検査は難しかった。

    新診断法は細胞だけで確実にALK遺伝子の有無が検査できるため、効果の有る肺がんだけを治療対象に限定できる。効果の無い肺がん患者に無駄な治療をすることが回避できるのだ。

    治療効果が見込まれる患者を選んで薬を投与する治療を『オーダーメード医療』と呼ぶ。不要な副作用に苦しむことなく治療効果の高い抗がん剤だけでがんが治せる時代を迎えつつある。

    2012年6月11日

    転移大腸がんに有効な抗がん剤

    転移性大腸がんの二次治療にベバシズマブの継続投与が有効と判った。

    転移性大腸がんの一次療法として、ベバシズマブ+化学療法の併用治療に効果が得られずがんが進行した患者に、継続してベバシズマブを投与した化学療法を行うことで、全生存期間(OS)が延長することが確認された。さらに、ベバシズマブでの治療期間が延びても、ベバシズマブ関連の有害事象が増えないことも示された。

    米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)での発表。

    生存率向上できる前立腺がん治療

    前立腺がんの治療に際しては、アンドロゲン遮断療法(ADT)の単独療法よりも、アンドロゲン遮断療法(ADT)と放射線療法(RT)の併用治療が、生存率を向上させることが大規模な治験で判明した。

    前立腺がん治療の研究調査の対象は、局所進行性前立腺がんもしくは限局性前立腺がん患者1205例で、調査期間は1995年~2005年の10年間。持続的ADT療法+RT併用療法(603例)、持続的ADT単独療法(602例)の結果が分析された。

    これらの結果から、ADTと放射線療法の併用は、放射線療法が適切とされる局所進行前立腺がんの全患者に提供されるべきと結論付けた。

    2012年6月8日

    肺がん,腎臓がん,皮膚がんに劇的効果の新薬

    がん患者の免疫機能を強化してがんを治療するタイプの抗がん剤新薬 2種の臨床試験が成功を収めた。

    一般的な治療法では効果が無かった非小細胞肺がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、腎臓がん患者の4人に1人にがん治療で大幅ながん患部の縮小が確認された。

    2種の抗がん剤は米国の薬品大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(Bristol-Myers Squibb)が開発中の新薬。これらの抗がん剤新薬は、がん細胞を直接攻撃するのではなく、がん患者の体を蝕むがん細胞の保護膜を破壊し、免疫系の働きを助ける効能によってがんを治療する作用があるという。

    新薬は、免疫細胞の表面に存在するタンパク質PD-1の結合を阻害する「BMS-936558」 (抗PD-1抗体)、がん細胞の表面に存在するタンパク質PD-L1の結合を阻害する「BMS-936559」(抗PD-L1抗体)。

    「BMS-936558」の治験は、207人を対象に行われた。結果として、非小細胞肺がん患者10%、皮膚がん(メラノーマ)患者17%、腎臓がん患者12%に新薬の治療効果が確認された。

    「BMS-936559」の治験は、296人を対象に行われた。治験結果では、非小細胞肺がん患者18%、皮膚がん(メラノーマ)患者28%、腎臓がん患者27%の腫瘍が著しく縮小した。さらに被験者の5~9%に6か月以上の病状安定がみられたという。

    しかし、今回の治験では被験者の14%に深刻な毒性の副作用が確認され、うち3 人が肺炎で死亡した。また、副作用として大腸炎や甲状腺異常が確認されたほか、疲労感や肌のかゆみ、発疹といった症状を訴える患者もいた。

    「PD-1とPD-L1が、がん治療における重要なターゲット」だということは強く示されたが、今後は、2つの治療薬について大規模な臨床実験へと開発が進められる予定。

    2012年6月7日

    肝臓がんを抑える食材

    青魚やウナギが肝臓がんリスクを4割も低下させることが判った。

    1995年から最長2008年まで岩手など9府県の45~74歳の男女約9万人を、追跡調査した国立がん研究センターが発表した。

    多くの肝臓がんはB型もしくはC型の肝炎ウイルスの感染が原因で慢性肝炎を発症し、その後に肝臓がんへ悪化する。しかし、魚の油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸を多く取っている人ほど肝臓リスクが低下することが判明した。魚の油に含まれているDHAなどの不飽和脂肪酸の抗炎症作用が、肝炎が肝臓がんに移行するのを抑えていると推察された。

    結論として、青魚やウナギなどをよく食べる人は、あまり食べない人に比べて肝臓がんになるリスクが約4割低下できるとされた。

    2012年6月6日

    乳がん転移を容易に確認できる

    抗がん剤の効果の有無を投与前に簡単に目視できる新検査法が開発された。新検査法では、転移がんの発見も容易になる。

    新検査法を開発したのは、国立がん研究センターと理化学研究所のグループで、まずは乳がんを対象にした実験で成功を収めた。

    新しい検査法は、がん細胞だけを狙う抗がん剤に、特殊な放射性物質を組み合わせて微量投与し、PET(陽電子放射断層撮影)で撮影し、画像を観察する。画像上では がん細胞が放射性物質によって緑色に光るので容易にがん細胞が確認できるのだ。がん細胞が光るために転移したがんも容易に確認できる。

    従来の検査では、がん細胞を体内から針で採取する必要があり、がん患者の負担も大きかったが、新検査法では苦痛も大幅に軽減され、転移がんまで視認できる。

    今回の実験では、一部の乳がん患者に対して著効を示す抗がん剤「トラスツズマブ」が狙う細胞の可視化で成功した。

    トラスツズマブは乳がん治療に用いられる特定抗がん剤だが、新手法によってがん患者へのトラスツズマブの効果効能を投与前に事前把握でき、乳がんの転移も確認できたのだ。

    最近の抗がん剤新薬は投与開始前に、患者のがんタイプに対して薬の有効性を検査するために、体に針を刺してがん細胞を採取した検査が不可欠だった。今後は他の抗がん剤でも効用研究が進められる予定で、転移がんも含め、がん患者の体を傷つけずに適切な治療薬を選べるようになる。

    転移がん 光らせて発見する新技術

    抗がん剤の有効性を投与前に容易に画像で可視化できる新技術が開発された。新検査法を用いれば、転移がんの発見は容易になる。

    がんの新検査法を開発したのは、国立がん研究センターと理化学研究所のグループ。

    新しい検査法では、 がん細胞だけを狙う抗がん剤に、特殊な放射性物質を組み合わせて微量投与し、PET(陽電子放射断層撮影)で撮影する。すると、がん細胞が放射性物質で緑色に光ることで容易に確認できるのだ。さらには、転移したがんまで、体内にあるがんが画像として可視化できる。

    従来の検査は、がん細胞の一部を採取する必要があり、患者の負担が大きかったが、新検査法では負担が大幅に軽減され、かつ転移がんまで視認できる。

    今回の実験では、一部の乳がん患者に対して著効を示す抗がん剤「トラスツズマブ」が狙う細胞の可視化に成功した。

    トラスツズマブは乳がん治療に用いられる特定抗がん剤で、新手法によってがん患者へのトラスツズマブの効果効能を事前把握でき、乳がんの転移も確認できた。

    近年の多くの抗がん剤は使用する際に、患者のがんタイプに対して薬の有効性を検査するために、体に針を刺してがん細胞を採取して検査が必要だった。今後は、転移がんも含め、がん患者の体を傷つけずに適切な治療薬を選べるようになるように、他の抗がん剤でも効用研究が進められる。

    2012年6月5日

    良好な治験結果の肺がん新薬

    肺がん治療の抗がん剤新薬として開発中の「アファチニブ」臨床試験において、良好な治療効果を発揮した。標準化学療法(ペメトレキセド/シスプラチン)を受けた肺がん患者では半年を超える程度であった無増悪生存期間(がんの悪化が抑えられる期間)が、新薬アファチニブ投与患者では13.6カ月に延長された。

    つまり、半年以上のがん抑制効果が得られたことを意味する。

    特にEGFR(ErbB1)遺伝子に変異を有する肺がん患者に対する治療効果が顕著であったことが報告されている。

    アファチニブによる肺がん治療は、がんが進行するまでの期間が延長されることによって、日常生活を制限する肺がんの諸症状についても、良好にコントロールすることができる。また、新薬アファチニブの効能は、呼吸困難(息切れ)、咳嗽、胸痛などの症状の改善も多く観察され、これらの肺がん症状の発現を遅らせるという効能も期待される。

    今後はさらに治験が進められ、安全性の確認がなされる。

    2012年6月1日

    腎臓がん へ抗がん剤新薬

    腎細胞がん治療用の抗がん剤新薬を厚生労働省が5月31日に承認した。

    新薬承認された抗がん剤は、インライタ錠1mg、同5mg(一般名:アキシチニブ、販売:ファイザー)。

    効能・効果のある治療対象のがんは「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」とされている。アキシチニブは、腫瘍の増殖などに関与していると考えられる血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体1、2、3を選択的に阻害し、がん細胞の増殖を抑える効果があるとされている。治験では一次治療の抗がん剤に抵抗を示したがん患者に対して有効性、安全性が検証され、効果が確認された。

    その腎細胞がん治療薬としては、経口のスーテントカプセルを販売し、mTOR阻害剤トーリセルもファイザーが販売している。

    肝臓がん になる原因は

    肝臓の病気で一番やっかいな肝がん。

    肝臓がんは原発性と転移性に分けられる。

    転移性肝がんは、他の内臓にできたがん細胞が血液の流れに乗って肝臓に漂着し、そこで根を張り大きくなったがん。肝臓には胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓(ひぞう)から血液が流れ込む門脈という血管があるので、消化器のがんが転移しやすいのだ。

    肝臓にまでがんが転移してしまったがん患者は、原発である臓器のがんの進行度は末期がんであるステージ4に分類される。

    原発性肝臓がんは肝臓自身の細胞から発生したがん

    さらに詳細な分類として、肝臓の働きを担っている肝細胞から発生する肝細胞がんと、胆汁の通る管を作っている胆管細胞から発生する胆管細胞がんに分けられる。

    肝臓がんの大部分の患者は肝細胞がんであり、通常「肝がん」というと肝細胞がんのことを指す。

    日本人で肝臓がんのがん死亡率に占める割合は、男性では肺、胃、大腸に次いで4位、女性では大腸、乳腺、肺、胃、膵臓に次いで6位を占めます。肝臓がんは日本人に頻度の高いがんだと言えるだろう。

    ところで肝臓がんは、健康な肝臓からはほとんど発生しない。肝臓がんは慢性肝炎や肝硬変などの肝疾患が悪化した結果として発症することが多いのだ。肝臓がんの原因となっている肝疾患は、ある統計ではB型肝炎が27%、C型肝炎が56%と、B、C型肝炎で83%に及ぶ。また、他の肝臓がんの原因としては、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎も影響が大きい。

    なお、肝炎ウイルスと肝がんは非常に強い関連があり、B型またはC型の肝炎ウイルスキャリアの発がん率は、肝炎ウイルスを持たない人の100倍超とされている。肝炎ウィルスに対しては、インターフェロンやベータグルカンなどで事前の対策を怠らないことで肝臓がんが予防される。

    2012年5月31日

    前立腺がん, 胃がん が転移する原因物質を特定

    胃がんや前立腺のがん細胞の転移に関与する特定のたんぱく質が発見された。抗がん剤新薬の開発に繋がる可能性を秘めている。

    発見された物質は「デイプル」と呼ばれるたんぱく質の一種。デイプルを培養した細胞実験は、胃や前立腺がんの転移を促す信号として知られる別のたんぱく質「ウィント」との相関関係が調べられた。その結果、デイプルを培養した細胞では、ウィントがデイプルを活性化してがん細胞が活性化されたが、デイプルの働きを抑えた細胞では、 がん細胞の活性化は見られなかった。つまり、「デイプル」の働きを抑制することで、「ウィント」の働きを抑制でき、それががん細胞の転移・増殖を抑制できるのだ。

    さらに、マウスに傷を付けた実験では、皮膚の表面や真皮の中にあるデイプルが傷口の治癒に効果があることも判明した。今後は「デイプル」が人体にどう作用するかを調べ、 がんの予後の回復や転移の仕組みを解明し、胃がんや前立腺がんの抗がん剤新薬の開発が期待される。

    研究は、名古屋大が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。

    2012年5月30日

    肺がん新薬は がん遺伝子を阻害

    原因となる がん遺伝子の働きを阻む作用を持つ世界初のがん治療薬、肺がん治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)は、ファイザーから発売された。

    ザーコリ(クリゾチブ)は、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害することで、肺がんの進行を抑制できる。肺がん患者の多くを占める「非小細胞肺がん」の患者のうち、約3~5%はこの ALK遺伝子を持つという。

    ザーコリの発売により、治療効果が見込まれる患者を予め遺伝子検査によって選んでから抗がん剤を投与する「個別化医療」が開始される。

    2012年5月29日

    フルーツ皮の健康食品ががん治療に有効

    フルーツのマンゴスチンの厚い果皮が、ん治療向けの健康食品として普及を図られる。

    マンゴスチンの厚い果皮は、抗菌や抗カビ作用があることで知られており、東南アジア地域では古くから伝承薬として用いられてきた。

    マンゴスチンの厚い果皮はポリフェノールの一種である「キサントン」という成分を含んでおり、この成分を抽出することで、 がん治療の補完代替医療に役立つ健康食品として実用化したのだ。

    培養したヒトのがん細胞と大腸ポリープを発症したラットに対して、抽出したキトサンを加えると、低濃度で48時間後にがん細胞の6~7割が死滅した。

    一方、ラットに対しては、0.05%の非常に薄い濃度でエサに混ぜて食べさせたところ、食べないラットにに比べてポリープの数が約半数に減少した。副作用も無かったという。

    キサントンには抗酸化免疫活性化の作用があることから、 がん予防やがん再発を抑えるための機能性食品として販売が開始される。

    肝臓がん原因遺伝子特定から新薬

    肝臓がん向け分子標的薬の開発への基礎研究が前進した。

    がんへの特効薬として脚光を浴びている分子標的薬はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤だが、肝臓がんには、効果的な分子標的薬が開発されてはいなかった。 2007年に米国で再発性や進行性肝臓がんに対して分子標的薬が使われるようになったが、その予後は悪く特効薬とは呼べる効果が発揮されなかった。そのため、肝臓がんの分子機構の解明による新たな治療法や予防法の開発が強く望まれていたのだ。

    肝臓がん患者の27例のDNA=遺伝子情報(ゲノム)を解読したところ、 DNA複製に関わるクロマチン制御遺伝子の異常が高率で見つかったのだ。

    つまり、肝臓がんの多くは、クロマチン制御遺伝子の異常を抑制することで、がんの発症予防や癌抑制、またはがん転移を阻止できるのだ。いよいよ肝臓がんには、有望な分子標的薬が登場する素地が固まってきたと言える。

    研究は、理化学研究所と国立がん研究センターなどの研究チームが実施し、科学誌ネイチャー・ジェネティクスへ発表した。

    2012年5月28日

    睡眠時無呼吸症候群とがん死リスクに関連性

    がん死に関連する睡眠時呼吸障害 - 最大5倍のリスク上昇

    睡眠中に一定時間呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などの睡眠中の呼吸障害が、がんによる死亡リスク上昇と関連していることが判った。重度の睡眠時呼吸障害があった人のがんリスクは、障害が無かった人に比べて最大4.8倍のリスク上昇が確認された。

    睡眠時呼吸障害は、心筋梗塞や心血管疾患だけでなく多くの疾患の死亡率を増加させることは既知だったが、これまでは、がんによる死亡率との関連は明確ではなかった。しかし、米国ウィスコンシン州の地域住民が1,522人を対象とした22年間の死亡データを調査した結果として、がん死と睡眠時呼吸障害の関連が明示されたのだ。

    実際の調査では、1522人の調査対象者中の365人(24%)が「睡眠時呼吸障害あり」と診断され、この内の222人が軽度、84人が中等度、59人が重度と分類診断された。そして、追跡期間中に50人ががんによって死亡した。

    データを分析すると、睡眠時呼吸障害のがんによる死亡と全死亡の関連が見られ、リスク上昇の程度は、軽度のグループで1.1倍、中等度のグループで2.0倍、重症のグループで4.8倍と、症状が重くなるほどにがん死のリスクも高まっていたのだ。この調査データ分析から睡眠時呼吸障害が、がん死リスクを増大させると結論された。

    調査研究は、米ウィスコンシン医学・公衆衛生大学院によって実施され、 5月20日付の米医学誌「American Journal of Respiratory Critical Care Medicine」に報告された。

    2012年5月25日

    スキルス胃がんを克服できた理由

    胃がんは、長らく日本人の死因の上位に位置してきたが、最近は以前に比べて死亡率が大幅に減少している。

    早期診断、早期治療の普及に加え、胃がんの最大の原因とされるピロリ菌の検査・駆除が進展したからだ。それでも、胃がんの発生は少ないわけではなく、胃がんを発症すれば命の保証はない。胃がんの中でも最も治療が困難な「スキルス胃がん」(ステルスではない!)から生還した30代男性の体験談。

    胃がんの発見は偶然が重なった。

    付き合いで酒を飲むことが多い上にプライベートでもほぼ毎日飲んでいた。学生時代からタバコも継続していたため、がんを発病する因子は揃っていたと言える。

    少々飲み過ぎた時期があり、胃のもたれや痛みを感じるようになり会社の先輩に相談すると、胃カメラ検査を強く勧められた。その先輩は胃がんのために20代で逝った友人がいたのだ。

    現在の胃がん検査は、無痛検査なら苦しまずに受けられるのは驚きだった。胃カメラは口から入れるタイプとは別に、鼻から入れる胃カメラが開発され、検査の負担は格段に緩やかになっているのだ。

    そして、その検査で胃がんが見つかった。しかも「スキルス胃がん」。スキルス胃がんは、胃がんの中でも非常に治療成績の悪いタイプのがんなのだ。

    ネットでも調べるも、スキルス胃がんの治療の困難さに愕然とし、一度は諦めかけた。しかし、検査をした医師の紹介で大学病院に行き、かなり大規模な手術で切除して助かることができたのだ。

    当の執刀医さえも、運の良さを繰り返し強調するばかり。執刀医の手術の技術以上に、胃カメラで早期発見してくれた医師の眼力が感心されたという。

    スキルス胃がんの大手術から4年が経過するも、がんの再発・転移ななく、予後は順調。

    いくつかタイプのある胃がんの中でもスキルス胃がんの予後の悪さ=治療の難しさ=は突出しているのだが、早期に検査を受け、早期に適切な手術を受けたことが、スキルス胃がんの克服に繋がったと言える。

    血便などの明らかな症状が出てからでは、「手遅れう」の可能性がある。喫煙や飲酒などのがリスクを自認しているなら、さらに気になる症状がある時には、年齢に関係なく、一日も早い検査が命を救うのだ。

    2012年5月22日

    がん治療費に使える平均総額と最先端医療の金額

    「がん」の治療費に関わる意識調査の結果が発表された。

    全体の6割の人が自身ががんを発症した場合に「保険金なども含めて治療費としては100万円以上は使えない」と答えている。この傾向は、世代・性別の属性別でも、総じて6割と変わらない。概算平均額で見るとがん治療費に使える総額の平均は130万円程度。やはり高齢層の方ががん治療に使える金額は多い傾向がある。

    心臓病や脳血管疾患の治療法が進んだことから、間違いなく日本人の死因第一位となった「がん」。 がん治療には保険適用外の先進医療なども合わせ、多種多様な、そして比較的長い(とはいえ最近では平均入院日数は30日を切っている)治療を要するようになる。自然とその治療費は高額となる傾向があるものの、多くの人が「がんの平均治療費は100万円である」と聞くと「高い」と感じるようである。

    がん」を発症した場合、保険金も合わせていくらまで使う事ができるか、という問いには、 6割の人が「50万円未満」「50~100万円未満」の領域に留まっていおり、現状では「100万円以上は少々難しい」というのが現実なのだ。

    しかし先進医療などで、陽子線治療、重量子線治療 等を受けるには300万円以上、 免疫細胞療法で150万円前後、サプリメント療法でも月額数万円の治療費が必要となる。お金が無いゆえに、満足な、最先端のがん治療が受けられない「がん難民」の潜在率は6割近くに達していることになる。

    米国では富裕層ほどに、先進医療に加え、サプリメントなどと組み合わせた混合医療の取組が顕著で、貧困ががんでの死亡を更に引き寄せる原因となっている。

    日本が世界に誇れる唯一の社会制度「国民皆保険」の先進医療への承認が待望される。

    2012年5月21日

    卵巣がん,胃がん,子宮がんの手術実績が高い病院・医師

    がんの手術は、特に女性特有のがんである子宮がん、卵巣がんなどの場合、術後の患者の生活や精神面を考え、傷口を小さくしつつ、がんだけを完璧に取るかが問われる。

    子宮がん、卵巣がんは転移が懸念されるために全摘出手術が多い。しかし、傷痕に心を痛める患者の想いとがんの再発リスクを比べつつ、両立させることが、「がん名医」なのだ。

    子宮がん、胃がん、卵巣がんの名医を下記に挙げる。

    • 兵庫医科大学病院:笹子 三津留 医師
      胃がん手術の最前線で執刀しているは、 2007年まで国立がんセンター副院長だった笹子医師は、デスクワークよりも現場での執刀を優先して退職し、現在の兵庫医科大学病院へ異動した。2千件を超える執刀数もさることながら、後継者を育てるという強い気概にも信頼は高い。
    • がん研有明病院(東京):滝澤 憲 医師
      がん研有明病院は子宮がんの手術件数が毎年国内1位。病院全体のモチベーションが非常に高く、技術力も国内トップ。
    • 北海道大学病院:櫻木 範明 医師
      子宮がん手術の『北大式』というオリジナルの手術法を開発したことで有名。子宮摘出の際、残すべき神経組織をていねいに残すことで排尿障害などの合併症防止を図る。患者とのコミュニケーションが密であることも評判が高い。
    • 筑波大学附属病院(茨城):吉川 裕之 先生
      進行したがんや取りにくい場所にできたがんの手術に対して、高い生存率を上げている。高い技術的で評価が高い。
    • 埼玉医科大学国際医療センター:藤原 恵一 医師
      「子宮摘出手術時の神経温存術」をオリジナルでを発案した。卵巣がんの手術にも定評。
    • 倉敷成人病センター(岡山):安藤 正明 医師
      子宮がん、卵巣がんには、保険適用が認められていないために高額な腹腔鏡手術を8千例以上成功させている。治療費が高額(140万~200万円)でも頼る患者が増える技量がある。

    2012年5月18日

    腎細胞がん新薬が治験で効果

    開発中の進行性腎細胞がん治療用の抗がん剤新薬「チボザニブ(アステラス製薬)」が良好な治験結果を得ている。

    抗がん剤新薬「チボザニブ」は、既に承認を取得している既存の抗がん剤である「ソラフェニブ」より良好な治療効果が示されている。

    チボザニブはソラフェニブよりも投薬でがんが悪化しない期間(無増悪生存期間)が長くなり、副作用も少ないという実験結果。

    1年以上のがんを悪化させずに現状に留める効果は画期的な抗がん剤新薬との期待が高まる。

    2012年5月17日

    胃がん、大腸がんの最新がん検査法で海外進出

    金沢大学が開発した、血液によるがん検査がインドで事業化される。

    この血液がん検査は「マイクロアレイ血液検査」と呼ばれ、がんに関係する遺伝子を載せた「DNAチップ」を使い、患者の血液から抽出した遺伝物質を解析することでがんを早期に発見できる。金沢大学とバイオベンチャー企業「キュービクス」が共同開発し、特許も取得済。

    今のところ「血液がん検査」が対応している がんは消化器系がん(胃がん、大腸がんetc.)だが、今後は肺がんや乳がん子宮がん前立腺がん等のがんへもの適用できる改良を目指している。

    血液の遺伝子解析によるがん検査法は昨年2011年8月に商品化され、石川県内では金沢市の北陸病院、七尾市の恵寿総合病院、白山市の公立松任石川中央病院、加賀市の山中温泉医療センターへ導入されている他、砺波市の砺波総合病院などと合わせて国内24施設で約200例への導入実績があり、評価を得ている。

    海外では、ドイツに続き、今回のインドへの事業展開が2例目となる。

    インドでは、提携した地元企業が、2012年中に臨床性能試験を300例実施し、来年2013年にも検診事業が開始される。その後、中近東やシンガポールへの展開も計画されており、日本からはDNAチップの輸出拡大と検査や解析の手法の指導が期待されている。

    2012年5月16日

    抗がん剤の効果を高める手法を発見

    「断食」が、がん治療の効果を高める"可能性"が示唆された。標準治療で効果が出ていないがん患者、抗がん剤治療を受けている進行がん患者には、意味の有る研究結果だ。

    マウス実験が行われたのは、メラノーマ=悪性黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫を発症しているマウス。それぞれに2日間を断食させた後に抗がん剤治療を実施し、がんの進行度を比較した。

    結果として、断食しなかったマウスと比べ、断食したマウスは がん(腫瘍)の転移率が40%も低下もしたのだ。特に、神経芽細胞腫に関しては、断食後に化学療法を受けたマウスでは 42%が がんを再発せずに180日間生存したが、断食しなかったマウスでは全て死亡した。

    がん患者への断食の治療効果を検討する"臨床試験"にはまだ及ばないが、抗がん剤治療の効果を高める一手法としての”可能性”が示唆されたと言える。つまりは、標準治療に効果が無い進行がん患者は、検討に値する新がん治療法とも。

    米国 南カリフォルニア大学が実施したマウス実験の論文は、米国の医学誌「Science Translational Medicine」に発表された。

    抗がん剤は2種類に大別される!

    抗がん剤は、「従来の抗がん剤」と、「新規抗がん剤」と呼ばれる分子標的薬の2種類へ大別されつつある。

    従来の抗がん剤は、がん細胞のDNAや骨格をつくるタンパク質を直接攻撃し、がん細胞を破壊することで治療効果を狙った。一方の、新規抗がん剤=分子標的薬は、がん細胞が増殖する中で重要な役割をしている分子を標的にして阻害し、 がん細胞の増殖を抑えることを可能とした抗がん剤。がん細胞を養う血管増殖を抑制する分子標的薬もある。

    従来の抗がん剤は、吐き気、食欲低下などの消化器症状や、脱毛がほぼ確実に発現したが、分子標的薬はこのような副作用が比較的少ないとされている。

    -> 分子標的薬の副作用対処法

    また、治療効果を予測した上で、投与する薬を選べるという点も進歩したところです。大腸がん治療の分子標的薬では治療前に患者のがん細胞のKRAS遺伝子(がんの増殖に関わる遺伝子)を組織検査で調べる。KRAS遺伝子に一部変異を認める場合は、ある種の分子標的薬を投与しても治療効果が期待できないからだ。

    治療前に検査を行うことで、不要な抗がん剤治療を避けることができることは分子標的薬の大きな特徴だ。現在、消化器がんで使用されている分子標的薬は、胃がんではハーセプチン、大腸がんではアバスチン、アービタックス、ベクチビックス、肝臓がんではネクサバール、膵臓(すいぞう)がんではタルセバなど。

    それぞれ、点滴薬や飲み薬があり、分子標的薬の単独だけでなく、従来の抗がん剤との併用でも使用されている。

    分子標的薬による抗がん剤治療は、外来通院で実施されることが多く、自宅で過ごしながら抗がん剤治療を受けることができるようになったため、入院することは少なり、生活の質を極力落とさない抗がん剤治療が可能となっているのだ。

    全世界では、さらに分子標的薬の研究が進められているので、治療効果が高く、副作用が少ない分子標的薬がさらに開発されることは時間の問題だ。

    抗がん新薬の副作用と対処法

    がん治療に登場している新しいタイプの抗がん剤「分子標的薬」。

    がん細胞だけで過剰に働いている分子や、増殖や転移にかかわる分子を狙い撃ちするため、従来の抗がん剤に比べ正常細胞のダメージ=副作用が少ないとされる。しかし、実際に分子標的薬タイプの抗がん剤使用が広がると、想定外の副作用も認められるようになってきた。その中でも皮膚障害は非常に顕著な抗がん剤副作用なのだ。

    消化器領域で現在、分子標的薬が使われているのは肝臓、胃、膵臓、大腸のがん。例えば大腸がんで使われているセツキシマブやパニツムマブは、がん細胞の表面に顔を出す「EGFR」というタンパクに結合し、増殖や転移を抑え込む。しかしEGFRは、皮膚や毛包、爪の増殖・分化にも深く関与しているため、その働きも同時に抑制され、皮膚障害が高頻度に現れる。ニキビに似た皮疹、全身の皮膚が乾いて亀裂が生じる乾皮症、かゆみを伴う掻痒症、爪の周囲が腫れて痛む爪囲炎などは、辛い副作用だ。

    がんだけで働く分子を探すのはなかなか難しく、分子標的薬もまた正常細胞を傷つけてしまうのが現実。 だが、皮膚障害の強いがん患者ほど、分子標的薬の抗がん効果が高いという事実がある。そこで、副作用の皮膚障害にうまく対処しつつ、抗がん剤治療を継続することが治療の肝になるのだ。

    既知の対処法として、抗がん剤治療の開始前から抗生物質の内服や保湿剤の塗布を予防的に開始し、開始後にはステロイドの塗り薬を適切に使うと、皮膚障害が軽減される。この基本的な抗がん剤対処法を知らない医師も多いので、がん患者自身からの啓蒙も不可欠なのだ。

    2012年5月15日

    肺がん、前立腺がん、乳がんの骨転移へ新薬

    がんの骨転移で生じる骨病変を抑える抗がん剤新薬が発売された。発売された新薬は、デノスマブ(製品名 ランマーク、販売会社 第一三共)。1カ月に1度、皮下注射する。

    がんの骨転移で生じる骨病変に対しては、骨粗しょう症治療に使われる骨吸収阻害剤ビスフォスフォネートしかなかった。比較試験で新薬デノスマブは、ビスフォスフォネートを上回る効果が確認された。

    がんが骨に転移して起きる骨病変は、病的骨折などの危険を伴う。骨転移は前立腺がん乳がん、肺がんの三つのがん患者に多く発生する。

    新薬は「分子標的薬」で、骨を吸収する破骨細胞の活動を活発化させる仕組みを妨げ、骨の破壊を防ぐ効果がある。多発性骨髄腫の骨病変にも適用できる。

    2012年5月14日

    膵臓がんリスク27倍を早期発見する新検査とは

    膵臓がんを治すためには、早期発見が最善策だ。全てのがんに共通する早期発見だが、特に膵臓がんでがん発見が遅れる理由は、膵臓が腹部の深いところにあり、厚みも無いために画像診断が難しいからだ。さらには胃や腸のように内視鏡で簡単に組織を調べられないため、早期発見が容易ではない。そのため、膵臓がんの多くががん発見時点で既に周囲に転移した末期がん となっている。「上腹部の不快感」訴えても胃炎と診断され、数カ月後に黄疸が出て痩せ細り、進行膵臓がんだと分かるケースが多発している。

    そのため、膵臓がんは、死亡率が高く、がんの中でも特に治療が難しいとされている、膵臓がんの生存率を上げるには早期発見に尽きると言われている。膵臓がん5年生存率は約10%と低いために「最も治り難いがん」とされてきたのだ。

    ところで、難治癌の膵臓がんでも、ステージ1=早期がんの状態で発見できれば、5年生存率は60%以上と高いのだ。早期がんで見つけることで、再発無しに完治できる患者も多い。

    膵臓がんの早期発見法では、超音波診断ですい臓内の「主膵管」を観察する。すい臓内の「主膵管」は膵液を十二指腸に運ぶ管だが、「太く」なっていたり、「袋状の嚢胞」がある人は、膵臓がんへ移行する確率が高いことが検査の肝だ。

    同手法を開発・推奨していr大阪府立成人病センターでは 1998年から超音波を使った膵臓がん検診を開始し、大きな成果を上げた。膵管拡張や膵嚢胞の患者1039人を平均5、6年間追跡して経過観察した結果、膵臓がんが17人にも発見され、このうち11人の膵臓がんを切除手術した。特筆すべきは、17人中7人(41%)がステージ0か1の早期がん状態で発見できたことだ。通常であれば、この早期がん段階ですい臓がんが発見されるのは、2%以下の低い確率であるので、膵臓がんの早期発見率としては非常に高いと言える。

    超音波膵臓がん検査は、人間ドックなどで膵臓が腫れているなど何らかの問題が見つかった人を対象に、通常1.5ミリ程度の主膵管が2.5ミリ以上と太くっていないか、嚢胞ができてないかなどを検査する。所要時間は、20分前後。もしも、異常があれば精密検査として、造影剤を使った超音波検査や、膵液の組織への移行する。

    同手法の成果と結果分析として、すい臓の「主膵管」に「拡張または嚢胞」のあった人は、異常の無い人よりも膵臓がんの発症リスクが約3倍高かった。さらに、両方の異常のある人は約27倍もの高いがんリスクが確認されて、年平均1%以上もの高い確率で膵臓がんを発症することも指摘された。従い、主膵管が太い人や嚢胞のある人は膵臓がんが発見されなくとも、高いがんリスクを念頭に6ヶ月毎の継続検診が勧められている。

    開始当初は「超音波で膵臓を見るのは難しい」と否定的な意見も多かったが、実用性が明らかに証明されたことで今後は膵臓がんの早期発見手法としての定着が期待されている。

    2012年5月11日

    乳がんリスクの化粧品と食品

    化粧品や食品に含まれる低濃度のカドミウムでも、乳がんを発症・転移するリスクが高まることが判明した。

    カドミウムは体内に入ると、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を示すことがあるため、特定の化粧品に含まれることがある。低濃度でもカドミウムに慢性的に曝露された細胞は、高レベルのSDF-1というタンパク質が発生することが判明したのだ。このSDF-1というタンパク質は、がん(腫瘍)の浸潤および転移に関連する物質=がんリスク物質として既知なのだ。

    化粧品以外にもカドミウムは農業用の肥料に添加されることも多い。食品も、化粧品も、がんリスクを避けるのに越したことは無いだろう。

    新たな乳がんリスクに関する研究は、米ドミニカン大学カリフォルニア(サンラファエル)生化学准教授のMaggie Louie氏が、米サンディエゴにて開催された実験生物学(Experimental Biology)学会年次集会で発表した。

    2012年5月10日

    抗がん剤効果と副作用と新ナノカプセル

    抗がん剤の効率的かつ効果的な投与方法が開発された。

    同量の抗がん剤を投与しても、副作用最小化され、効果は倍増できるという新手法は、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる微小カプセルを利用したドラッグデリバリシステム(DDS)。

    ドラッグデリバリシステム(DDS)とは、がん患者の病理部位だけに薬物を運ぶという仕組みだ。ドラッグデリバリシステム(DDS)に不可欠なのは、マイクロメートルもしくはナノメートルサイズのカプセルで、このカプセルに薬物を封入することで、がんなどの病理部位だけに薬物を確実に送り込むことを狙っている。

    旧来手法で、抗がん剤を体内へ投与しても、投与した薬物ががん患部へ到達する前に相当量が吸収・分解されてしまう問題があった。がん患部以外に抗がん剤が分散することが副作用の原因であり、がん患部への治療効果を低減してしまう。そこで、抗がん剤の放出持続時間を自在に制御し、薬剤の有効時間を数倍に延長できるカプセルが開発されたのだ。物質・材料研究機構(NIMS)が開発に成功した新開発のカプセルは、無機物のナノメートル厚のフレーク状物体「ナノシート」でできた伸縮自在のカプセルで、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる。開発された無機物のフレークシェルカプセルでは、カプセルの大きさが簡単に調節でき、さらには薬物を通過させる孔構造の調整も容易である。つまり、希望の量の薬剤を内部に封入し、かつ、それを希望の速度でがん患部へ持続的に放出することができるのだ。がんの状態に合わせ、量や持続時間を自在に調節できることは、非常に優れた抗がん剤物運搬体と言える。

    さらに、「フレークシェルカプセル」は、従来よりも多くの抗がん剤をカプセル内に封入できると同時に、抗がん剤の放出速度を抑えることができる。従来のカプセルに比べて、抗がん剤放出持続時間が格段に長くすることもでき、 1つのフレークシェルカプセルで数日間、持続的に抗がん剤を投与することが可能となった。

    また、表面に特定のがん標的を認識できる抗体を結合させれば、特定の病的部位にのみ薬物を送り込む「がんミサイル療法」への応用も可能なのだ。

    構造を自在に調節できるカプセルの開発によって、既存の抗がん剤によるがん治療にても飛躍的に治療効果を高められる可能性を秘めている。

    抗がん剤効果を飛躍的に高める新素材技術

    抗がん剤などの薬物を内部に収めて投与すると、抗がん剤の放出持続時間を自在に制御し、薬剤の有効時間を数倍に延長できるカプセルが開発された。新開発のカプセルは、無機物のナノメートル厚のフレーク状物体「ナノシート」でできた伸縮自在のカプセルで、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる。物質・材料研究機構(NIMS)が開発に成功した。

    がん患者の病理部位だけに薬物を運ぶという仕組みは、ドラッグデリバリシステム(DDS)と呼ばれる。ドラッグデリバリシステム(DDS)では、マイクロメートルもしくはナノメートルサイズのカプセルなどの担体に薬物を封入することで、 がんなどの病理部位だけに薬物を確実に送り込むのだ。

    従来の単純な薬物投与では、投与した薬物が体内の途上で吸収・分解されてしまうことが問題で、そのためにがん患部以外に分散してしまい副作用を引き起こしたり、肝心のがん患部への到達できる薬物量が少なかっのだ。

    「フレークシェルカプセル」には従来より多くの抗がん剤をカプセル内に封入できると同時に、抗がん剤の放出速度を抑えることができる。従来のカプセルに比べて、抗がん剤放出持続時間が格段に長くなり、1つのフレークシェルカプセルで数日間、持続的に抗がん剤を投与することも可能となった。また、カプセルをあらかじめ適当なpH条件下で処理しておくと、薬物を通す孔の構造が変わり、薬物の放出持続時間や薬物の貯蔵量を微調整することも可能だ。

    開発された無機物のフレークシェルカプセルでは、カプセルの大きさが簡単に調節可能であり、薬物を通過させる孔構造も簡単に変えられるという特徴を持つ。結果として、望みの量の薬剤を内部に封入し、かつ、それを望みの速度で持続的に放出することができる。 がんの状態に合わせ、量や持続時間を自在に調節できる優れた抗がん剤物運搬体になり得るというわけだ。

    また、表面に特定のがん標的を認識できる抗体を結合させれば、特定の病的部位にのみ薬物を送り込む「がんミサイル療法」への応用も可能だ。

    このように構造を自在に調節できるカプセルの開発・利用は、既存の抗がん剤によるがん治療にても飛躍的に効果を高められる可能性を秘めている。

    2012年5月9日

    大腸がんに効く香辛料

    大腸がん治療には、ウコン(香辛料ターメリック)が効果的である。 カレーなどの料理に色や香り付けに使われる鮮やかな黄色の香辛料、ターメリック=「うこん」。インド料理やタイ料理で頻繁に使用される香辛料として有名だ。

    このターメリック(うこん)に含まれる代表的な成分が「クルクミン」。このクルクミンという成分は、大腸がん治療時に抗がん剤のがん細胞殺傷力を高める効果があるのだ。この効果は、既に動物実験では実証されている。

    そして、ついにクルクミンの抗がん治療への有効性が臨床試験されることになった。大腸がん治療へのスパイス成分クルクミンの効果を検証試験するのは、イギリスのレスター大学(University of Leicester) のがん医療研究センターECMC(Experimental Cancer Medicine Centre)の研究チーム。

    従来の大腸がん治療の問題点として、抗がん剤治療の際の副作用の負担が大き過ぎることで、多くのがん患者が抗がん治療を長期間継続できなかった。しかし、クルクミンの抗がん剤助長効果が有効ならば、投与する抗がん剤の量を減らすことができ、がん患者への副作用も減少されて、治療をより長く=余命を延長できることになる。

    大腸がん患者は、うこん(ターメリック)を使用した料理を食べることが抗がん剤治療を効果的にできそうだ。

    余命延長の辛さは抗がん剤の副作用

    「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(幻冬舎新書)の著者であり、医師である中村仁一氏は、「大往生したければ医療と深く関わるな」「がんで死ぬのがもっともよい」と主張する。

    京都の社会福祉法人老人ホーム「同和園」の常勤医を務めながら、数百例のお年寄りの自然死を見送った経験からの氏独特の意見だ。ここには、日本の老人医療の問題点と 各自が持つべき死生観が凝縮されている。

    「医者が「大往生したかったら医療に深く関わるな」と発現すると、皆から いぶかられる。しかし、病院では、年寄りが 苦痛の果てに死んでいる現実があると。もしも、病院に行かなければ、もしも、医療が濃厚に介入しなかったら。きっと穏やかな死を迎えていたはずなのに 。
    病気やケガを治すのは、基本的には、人間が生来持っている「自然治癒力」。医者はそれを助ける「お助けマン」、薬は「お助け物質」に過ぎないと。医療は年老いたものを若返らすこともできなければ、死を防ぐこともできない。生物は当たり前に「老いと死」には無力なのだ。
    たとえばがん。「がん」とは すなわち「老化」。研究者によって大小はあるが人間は毎日5000個ぐらい細胞ががん化している。しかし、身体に自然に備わっている免疫の力でがん細胞を退治しているのでがんが発病しないだけだ。ただ、年をとると免疫力が自然と衰えるために、年寄りはがんになる。当たり前のことで、驚くことではない。
    がんの予防には「がんに ならないようにする」一次予防と、「がんを早く見つける」二次予防がある。二次予防には「早過ぎる死」を防ぐという目的もある。しかし、繁殖を終え、生きものとしての"賞味期限"の切れた年寄りにとっては、最早「早すぎる死」というものは存在しないはずと笑いながら断ずる。
    まだ成すべきライフワークが残っている年寄りは別として、普通の年寄りに「がん検診」は意味が無いと言えるだろう。鮭は産卵後間なしに息絶え、一年草は種を宿すと枯れ、つまりは、繁殖を終えたら死ぬ、という自然界の“掟”は、人間にも当てはまると説く。
    "がんは強烈に痛むもの"と一般には理解されており、ホスピスの調査でもがんで痛むのは7割程度。逆の視点では、3割はがんでも痛まないのだ。つまり3人に1人はがんでも痛まない最後を迎えられる。
    老人ホームでの実例としては、食が細り、顔色が悪くなってやせてきたので、病院で検査したら手の施しようがない「末期がん」と診断されとされた患者が、そのまま何もしない選択をしたが、最後まで痛まずに往生した。
    少なくとも発見時に痛みのない手遅れのがんは最後まで痛まないということは確実に言える。
    塊になるがん(固形がん=胃がん・肺がん・大腸がんなど)は抗がん剤を使っても、多少小さくなることはあっても、消滅することは無い。しかし、抗がん剤はいわば"猛毒"なので、正常な身体の組織や細胞に甚大な被害を与え、ヨレヨレの状態になり、QOL(生の質)を激しく貶める。
    "繁殖"を終えたら、抗がん剤は使わない方がいい。延命効果はなくとも必ず縮命効果はあるのが抗がん剤。数ヶ月の延命が、果たしてどういう状態の延命と”生”となるのがを考えるべき。青息吐息のヨレヨレの状態で生きることに意味のある人間は少ない。長生きするつもりが、苦しんだ末に命が短くなっているがん患者が多いのだ。
    「がんで死ぬんじゃないよ、がんの治療で死ぬんだよ」と。

    中村医師の言には、確かに一理あるだろう。

    生物としての生死の摂理と抗がん剤の功罪は熟考にも余りある。たしかに「がんの余命延長」と引換に がん患者のほぼ全員が直面する痛みと辛さは、その時間と質を考えざるをえない。家族のエゴと言われる場合さえあるかもしれない。

    しかし、それでも人類はがんを克服するべく研究を重ねている。副作用の少ない、がんを完治する新薬は、遠からず開発されるはず。そまでの数年間~数十年間は、生への"業"の深さと、達観した死の受け入れとの天秤に、個々人の人生観が問われるのだ。

    ただ、がん回復への渇望を誰しもが持ち続けることには変わりない。

    がん利用方針の選択する際の参考にはなるだろう。

    2012年5月7日

    胆管がん遺伝子で特効薬/新薬に期待

    胆管がんは、生命に危険のある肝臓がんの一種だ。全世界の肝臓がんの10~25%を 胆管がんが占めているおり、患者が多く、新薬へのニーズは高い。

    実は胆管がんは、特にアジアでは肝吸虫感染が原因で罹患することが判っている。肝吸虫が感染している鯉(コイ)や鮒(フナ)を食べることで、人間に感染するのだ。

    この肝吸虫が原因の胆管がんに関して、影響を受けるDNAが解読され成果が上がった。発病に関連すると見られる15個の遺伝子に関して、 46症例でスクリーニングを行い、がん発病と関連する遺伝子変異の出現率が調べられたのだ。その結果、数個の遺伝子の体細胞変異ががんとの関連性が確認され、さらには、胆管がんに関与する変異と見られる10個の遺伝子が新たに同定された。

    がん発病遺伝子が特定されることは、そのがんの特効薬となりうる分子標的薬の開発へに繋がる第一歩だ。

    胆管がんへの特効薬となりうる新薬開発が待たれる。

    2012年5月2日

    肺がんの最新治療法と保険混合診療

    非小細胞肺癌に対する重粒子線1回照射による治療が、「先進医療」として承認されたことから、保険診療との混合診療が認められることになった。

    非小細胞肺癌に対する重粒子線1回照射は、放射線医学総合研究所 重粒子医科学センターで約9年間の臨床試験で実績を上げている。そして、ついに3月16日の重粒子線治療ネットワーク会議にて先進医療への移行が認められたのだ。

    日本での肺がんのがん死亡者数は年々増加し、 1998年に胃がんを抜いて1位となった。肺がんの既存治療は、手術や、抗がん剤や放射線照射の組合せで行われており、早期の肺がんならば、ピンポイントの放射線治療は手術と同程度の成績が得られる。

    重粒子線は放射線の一種であり、体の中の一定の深さで線量が最も強くなるようにコントロールできるのだ。さらに、集中性も優れているので、体外からの照射でも、体の表面や正常組織への影響を最小限で、深部のがん病巣だけに集中的に照射できる。

    「日帰りの肺がん治療」が実現することになり、さらにその5年生存率が70%にまで高められている。

    肺がん患者の肉体的・経済的負担の軽減と早期社会復帰が実現するだろう。

    大腸がん に 新”補助療法”

    大腸がん治療にアスピリンが効果があることを判った。

    アスピリンと非ステロイド抗炎症薬(NSAID)に大腸がん予防効果があることは既に知られていたが、大腸がん診断後にもアスピリンを治療に用いることで死亡率が改善することが判明したのだ。

    調査を実施したのは、オランダのライデン大学医療センター。がん登録データを用いた大規模な観察研究を実施し、大腸がん(結腸がん)の診断後NI、補助療法としてアスピリンが効果的である可能性を示唆した。

    アスピリンの治療効果は、今のところ結腸がんのみで確認され,非アスピリン使用者と比較して死亡率が35%低かった。

    2012年4月26日

    健康食品のがん治療効果を臨床試験

    まいたけエキスの固形がん(肺がん, 胃がん, 乳がんなど)に対する作用効果を検証する臨床試験が実施される。

    今回の臨床試験は、米国テキサス州ヒューストンの、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター(University of Texas, MD Anderson Cancer Center)で、進行性がん に対して実施される。この臨床試験で確認されるのは、まいたけ抽出物の各種抗がん剤の効能改善と、副作用の軽減作用だ。

    具体的には、抗がん剤の「アザシチジン」で がんマーカーが顕在化したがん細胞に対して、免疫を制御する「レナリドマイド」と「まいたけ抽出物」投与し、骨髄細胞の分化増殖促進作用が検証される。さらに、キラーT細胞やナチュラルキラー細胞などの免疫細胞がマーカーを顕在化したがん細胞を攻撃するという免疫調節作用を検証することも目標とされている。

    まいたけ抽出物は、ベータグルカンを主成分とした健康食品の一種で、株式会社雪国まいたけが「MDフラクション」として 製造販売している。

    「MDフラクション」は10年間以上の基礎研究を経て、 2008年にニューヨークのスローン-ケタリング記念がんセンターで 元乳がん患者を対象としたP-I/II臨床試験も実施している。

    株式会社雪国まいたけ では、今回の臨床試験に対して、自社が日米で製法特許を有する マイタケ抽出物の健康食品「MDフラクション」を提供し、治験成果から 統合医療への健康食品の拡販を期待している。

    2012年4月25日

    胃がん, 食道がん手術の余分な切除を省く

    胃がん、食道がん の生存率を高める病院

    食道がんや胃がんでは、がんが粘膜の下の方まで進行していると、多くの場合、手術の適応になる。臓器の一部あるいは全部を切除し、がんの進行度合いによってはその周辺のリンパ節も取り除く。治療ガイドラインで定められている治療法で広く普及しているものの、新たな検査方法が確立されれば、どこまで切除すべきかが客観的かつ科学的に示され、より正確な治療法が確立されることになる。

    そんな胃がんや食道がんが、最初に転移しやすいのはセンチネルリンパ節という部分。現在、先進医療として、「センチネルリンパ節生検」という検査方法が行われている。

    がん病巣の近くに特殊な色素やラジオアイソトープを注入して、がんが最初にリンパ節に到達するセンチネルリンパ節を同定し、転移の有無を顕微鏡で調べる。この検査は、すでに乳がんやメラノーマ(皮膚がん)に対しては、広く行われている。それを食道がんや胃がんへ応用するために、世界に先駆けて1998年から研究を進めているのが慶應義塾大学病院 一般・消化器外科だ。

    慶應義塾大学病院は 先進医療の検査はもちろんのこと、小さな傷口で手術を可能とした腹腔鏡を用いた低侵襲の治療でもパイオニアである。

    「胃がんや食道がんに対して、センチネルリンパ節生検を行うと、取り残しや余分な組織の切除を省くことができるなど、さまざまなメリットがあります。ただし、その検査に基づく治療で、本当に従来の手術と同じ生存率を確保できるか。その見極めの研究を行っています」と副病院長と腫瘍センター長を兼務する同科の北川雄光教授(51)は言う。

    北川教授は、胸腔鏡・腹腔鏡手術のスペシャリストだ。食道がんや胃がんでも、患者にメリットがあれば胸腔鏡・腹腔鏡による手術を積極的に行っている。また、胃の良性腫瘍の胃GISTや、機能障害の一種・食道アカラシア、逆流性食道炎の手術では、全国に先駆けてヘソのひとつの穴から行う「単孔式腹腔鏡下手術」を導入。熟練した技術とチームワークで、低侵襲で確実に治療できる最先端技術を研究している。

    「胃がんや食道がんに単孔式腹腔鏡を応用するには、医療機器の進歩を待たなければなりません。また、将来的には、腹腔鏡下手術と内視鏡の治療を組み合わせることで、臓器の温存がこれまで以上に可能になると思います。しかし、それにもまだ数年かかるでしょう」(北川教授)

    腹腔鏡下手術でセンチリンパ節生検を行い、転移が見られなければ、内視鏡による治療で臓器を温存する。それは、これまで内視鏡の治療では、再発するのではないかと考えられた症例に対して、手術によって胃を部分切除するだけでなく、胃を残すという選択肢も広がることになる。

    「今後、医療機器などがさらに発達することで、治療方法や検査方法の選択肢は増えるでしょう。しかし、手術で治るがんは再発させてはいけません。それを追求するために取り組むべきことはまだ多い」と北川教授。確実に治るがんを増やすために、今も力を注ぎ続けている。

    < 2011年の治療実績 >
    ☆胃がん治療総数379件
    ☆胃がん手術件数158件
    (内腹腔鏡下手術82件)
    ☆食道がん治療総数182件
    ☆食道がん手術件数50件
    ☆センチネルリンパ節生検64件
    ☆病院病床数1059床

    慶應義塾大学病院
    〔住所〕〒160-8582東京都新宿区信濃町35
    (電)03・3353・1211

    既存抗がん剤の効果が上がる 新投与法

    がん治療へ既存薬を用いた「時間治療」が画期的な効果を上げ注目されている。

    「時間治療」とは、がん治療に用いる抗がん剤治療薬を「深夜」に投与するだけの治療方法で、抗がん剤は従来と全く同じ。投与する時間を「深夜」へ変えるだけで、 がん患者の生存期間の延長や、関節リウマチのつらい痛みや腫れがおさまるなどの効果が上がっているのだ。

    1.5倍の抗がん剤を深夜に投与してがん縮小

    健康診断で肝臓にガンが見つかり、抗がん剤治療を受けていた男性も「時間治療」でがん細胞が収縮した。発見時には、ガンが大き過ぎるために手術は無理とされたが、時間治療を導入している病院に転院し、それまでの抗がん剤の1.5倍の量を深夜に投与された結果、数ヶ月後には がん細胞が収縮したのだ。

    関節リウマチに対しても、長年苦しんできた70才の女性が、同じ薬を飲む時間を朝昼2回から"夜寝る前の1回に変更"しただけで痛みの症状が軽減された。

    このような病状や症状の改善の背景にあるのは、細胞の中で時計のように働く『時計遺伝子』研究の進歩とされる。

    「時間治療」は深夜に実施されるために医療スタッフの確保などの課題があるが、がん患者には試す価値が十分にある新治療法と言えるだろう。

    2012年4月24日

    末期の乳がん患者 の効果の新薬

    ドイツで進行性・転移性乳がんの新薬が承認された。

    承認されたのは、エーザイにより創製・開発された抗がん剤「HALAVEN」(一般名:エリブリンメシル酸塩)。

    複数の抗がん剤治療歴のある局所進行性・転移性乳がん に対して、作用効果を有していると評価された。評価は、ドイツ連邦合同委員会によってグローバル第III相臨床試験であるEMBRACE試験の結果に基づいて行われた。

    「HALAVEN(ハラベン)」は、単剤のがん化学療法の抗がん剤としては、世界で初めて治験医師が選択した治療法との比較で、統計学的に有意にがん患者の全生存期間の延長を示したとされる。

    進行性・転移性 乳がんの患者に対して、生存期間の延長=余命延長に寄与するとされる抗がん剤新薬だ。

    2012年4月23日

    抗がん剤新薬の混合診療を緩和

    既存の抗がん剤を保険承認時の適用外のがんに使う制度がいよいよ開始される見込みだ。

    厚生労働省は2013年4月にも、保険診療との併用(事実上の混合診療)を広く認める方針。

    現行の制度では、抗がん剤は、保険承認の際に治療対象となるがんが指定されており、保険適用外のがんに使うことは通常はできなかった。(全額自己負担なら可能だった)。抗がん剤は保険が適用できるがんの種類が決まっており、他のがんに使うと治療費が全額自己負担になってしまうのが原則=「混合診療の禁止」だった。しかし、保険適用の範囲を広げられることで、実用化が進んでいる肺がんの薬を卵巣がん治療に使うなど、がん治療の選択肢が保険診療内で広がる。

    抗がん剤の保険適用拡大は、手順として2段階で進められる。

    第一段階は、保険適用外の抗がん剤の使用を医療機関が国立がん研究センターに申請、審査される。「先進医療」として認定を受ければ、抗がん剤新薬として診察、検査など一般診療部分に保険が適用される。この段階では、抗がん剤新薬の薬代は、まだ保険対象ではない。しかし、「混合診療」が許されることだけでも大きい。 第二段階では、該当する抗がん剤の治療効果を確認されれば、厚労省による正式な薬事承認に先駆けて、抗がん剤新薬の薬剤費も含めて保険適用の対象費用とできる。

    米国では、「コンペンディウム」と呼ばれている "承認"と"保険適用"を切り離した制度が参考にされている。

    現行制度では、未承認薬をがん治療に用いると、薬代だけでなく、治療費全てが自己負担になるため、がん患者は、治療の断念か、多額の医療費を負担化の判断が強いられていた。

    抗がん剤の多くは、資本力が大きく、巨額の開発費を投入できる欧米の製薬会社を中心に研究・開発が進んでいる。自然と開発対象は、欧米人に多い肺がん大腸がん などのがんが中心となる。一方、日本人に多いのは、胃がんや卵巣がん で、さらには薬の実用化までの規制が強過ぎることから、抗がん剤新薬の応用研究が遅れているという実情があり、国内のがん患者団体が規制緩和を強く求めていた。

    日本医師会には反対論・慎重論があるそうだが、がん患者達の永年の希望が達成される見込みは強くなった。

    実は、厚労省が保険併用を広く認める背景には、国内の製薬会社の研究・開発を進める狙いがある。抗がん剤をはじめとする医薬品の輸入超過は年間1兆円を超え、貿易赤字の主因となってきており、国内で国内製薬会社による がん新薬の開発が急務となっているからだ。制度を改革し、抗がん剤新薬の研究開発を促すことで、日本をアジア向け抗がん剤新薬の研究・開発拠点に位置付け、医薬品輸出を拡大したい目論見なのだ。

    背景はさておき、がん患者と家族にとっては、使える新薬が増え、治療費が抑制できる新制度は朗報と言える。
    早期かつ確実な新制度の発足が望まれる。

    2012年4月20日

    前立腺がん新薬, 甲状腺がん新薬 を保険承認

    厚生労働省が がん治療新薬を審議し、下記の抗がん剤を新薬として保険承認を了承した。

    前立腺がん新薬: ゴナックス皮下注80mg, 120mg(デガレリクス酢酸塩:アステラス製薬)
    「前立腺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。海外55カ国で承認済。
    がん細胞の増殖を促す男性ホルモンであるテストステロンの産生を低下させ、腫瘍の増殖を抑える効能。テストステロンの産生に関わるGnRH受容体へのGnRHホルモンの結合を阻害するGnRH受容体拮抗薬である。
    4週に1回投与する。

    甲状腺がん新薬: タイロゲン筋注用0.9mg(ヒトチロトロピンアルファ遺伝子組換え:佐藤製薬)
    「分化型甲状腺がんで甲状腺全摘または準全摘術を施行された遠隔転移を認めない患者における残存甲状腺組織の放射線ヨウ素によるアブレーションの補助」の効能・効果を追加する新効能医薬品。

    なお、今回の審議会では、社会問題化しつつあった懸案の「ポリオの不活化ワクチン」も承認を受けた。

    2012年4月18日

    がん再発の原因細胞を阻害する新治療法

    部分的ではあるが、放射線治療後にがんが再発するメカニズムが解明された。

    がん が放射線治療後も死なずに再び増殖してしまうのは、低酸素環境でも生存できる特定の「低酸素がん細胞」が原因であると断定された。

    この特殊な がん細胞は、血管の周囲のがん細胞が放射線で死滅すると、遺伝子が活性化することで血管の方向へ移動することで死滅せずに生存する性質がある。実験では、治療前のがんには17%しか存在しなかった「低酸素がん細胞」が、 がんの再発時には60%に増えていた。実験では「低酸素がん細胞」を阻害剤で移動抑止すると がんが再発しないことが確認できた。

    がん新治療法として、「低酸素がん細胞」に放射線を集中照射する治療法の研究が進行している。

    がん再発メカニズムと「低酸素がん細胞」の関与は、京都大大学院の原田浩講師らの

    効果的なレーザー光線の がん新治療法

    レーザー光線を利用してがん細胞を効果的に破壊できる「光治療法」が開発中だ。

    光治療法は、がん細胞が熱に弱く42.5度で死滅する点を利用し、光を浴びると熱を発する物質(光増感剤)を患部に注射した後、レーザーを照射してがん細胞を死滅させる。患部のがん細胞だけを破壊するため、従来の抗がん剤に比べ副作用が少ないのが特徴だ。

    しかし、従来の光増感剤が水に溶け難いために人体に吸収効率が悪く、治療効果が落ちる一方で、水に溶け易くすると光増感剤が高価になってしまう問題があった。

    そこで、亜鉛フタロシアニンの光増感剤が、太さ数十ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の極細ナノ構造に改良された。

    このナノワイヤーは水に溶け易く、人体への吸収率も良好で、光を浴びて発熱する性質も保持していた。さらに、マウス実験でも、がん細胞の除去に成功したとされている。

    新光増感剤は、低価格で商用化されればさらに価格が下がるとされ、 がんの光治療法の進展が期待されている。

    新光増感剤の研究報告、科学誌『ネイチャー』発行の『NPGアジアマテリアルズ』に掲載された。

    2012年4月16日

    高い効果と少ない副作用の肺がん新薬へ

    高い治療効果でも副作用が少ない がん治療新薬「核酸医薬品」の新しい製造法が開発された。「RNA干渉」と呼ぶ仕組みで病気の遺伝子を機能しないようにする がん新薬が期待される。

    核酸医薬品は病気に関連する遺伝子やたんぱく質の構造に合わせて設計し、化学合成される。従来の製造法では鎖状の分子を多数作り、その中から使えるものを2本選んで絡める工程が必要だった。開発されたのは新合成法では、 合成したRNAはヘアピンのような構造で、1本の鎖状分子を折り畳んだ新技術は従来法の5倍以上の効率化が達成された。

    また従来のRNAの問題点だった点も改良された。効果発揮前に体内の消化酵素にRNAが壊される問題を酵素が働かないようにRNAを補強されたのだ。これでRNA構造が免疫機構から見つけにくくなり、免疫反応による副作用が低減された。

    新RNA製造法では、コストが大幅に低減され従来の数十分の1になった。

    RNAの治療効果は、動物実験で加齢黄斑変性という目の病気にて確認されている。2~3年内には、肺がん,糖尿病性網膜症の新RNA治療薬の治験が開始される。

    2012年4月13日

    人気の天然生薬が がん原因

    生薬に 高いがん発症率

    世界中で人気の生薬・植物薬「ウマノスズクサ」に発がん物質が含まれていることが、証明された。問題の植物は「ウマノスズクサ」は、果実は馬兜鈴と呼ばれ、咳止め、気管支拡張、去痰に効能、根は「青木香」、「土木香」などと呼ばれ、解毒剤、打ち身、炎症止め、禿の防止、腹痛止めに効果的とされていた。さらには、天然由来の自然ダイエット食品としての利用も近年は増加していた。しかし、今回の研究で、台湾の尿管がん、腎臓がんの半数以上に関連していると結論されたのだ。

    台湾での研究対象は、尿管がん患者151人。がん患者の60%にウマノスズクサ生薬に関連する特有の変異が確認され、特にアリストロキア酸の摂取後に腎皮質には特有の病変が発生し、がん抑制遺伝子TP53には特有の変異の兆候が生じたとされる。

    台湾では全人口の約3分の1がアリストロキア酸を摂取しており、台湾の尿管がんや腎臓がんの発症率は、アリストロキア酸の摂取が台湾ほど一般的ではない欧米諸国の約4倍だった。

    ウマノスズクサ原料の生薬に関して、バルカン半島諸国では1956年にウマノスズクサ属の種子をパンに混ぜ込む習慣が原因でアリストロキア酸による腎障害の発生が指摘されてた。また、ベルギーでは1990年代にアリストロキア酸を含むダイエット減量薬を使用した女性達が、突然に末期状態の腎不全になったと報告された例がある。米国では2001年にアリストロキア酸を含む植物性製品を使用した2人が深刻な腎障害を発症した。米食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)では既に警告を発している。

    ウマノスズクサ生薬が、腎臓がん、尿管がんの原因となっていることは、確実だ。「天然成分、自然由来の生薬・サプリメントなら安全」と思い込む患者は少なくないが、天然由来、自然物の方が、危険な物質、成分が多いことを再認識させられる研究報告だった。

    研究は米科学アカデミー(Proceedings of the National Academy of Sciences, PNAS)に発表された。

    2012年4月12日

    最新がん治療装置を大量導入

    がん治療に最新の放射線設備を導入

    最新のがん治療機器として放射線治療装置を4台新規導入したのが、東京都立駒込病院(文京区)。最新のがん治療機器でがん患者の治療が劇的に改善されることに期待が膨らむ。

    導入された最新治療機器は、脳腫瘍などの治療や肺がんにも適用が進んでいる「サイバーナイフ」を初め、「トモセラピー」と「TM2000(ヴェロ)」と呼ばれる種類の放射線治療装置、さらに手術中に手術室で放射線治療できる設備も一式が導入された。それぞれにの機器に専用の治療室が設置され、専門家や技師が増員される。

    3種のがん治療装置は放射線の正常な細胞への照射を減らすことで副作用を最小化するため、効果的にがん組織に大量の放射線を当てることができる。体内の様々な位置で複雑な形状をしているがん患者体内のがん細胞に放射線を照射することで、がんの根治に役立つ最新がん治療機器なのだ。また、がんの再発防止に術後照射や抗がん剤と組み合わせた治療にも活躍が期待される。

    最新の放射線治療機器は、がん患者の治療時の負担が軽いだけでなく、追加治療が減り、さらに痛み止め、抗がん剤の量も減らせる。そして、がん放射線治療の最大のリスクだった副作用を大幅に減らせることで、医療費も低減が可能なのだ。

    これらの最新の放射線治療装置を3種類揃えた病院は全国でも稀。東京都では、がんやエイズ診療の中核病院と位置付け、都民だけでなく全国からも がん患者の受け入れる意向だ。

    東京都は都立病院の再編と施設の老朽化に対応するため、民間資金を2008年から活用することで駒込病院に大規模な改修工事を施した。改装後は手術室が9室から15室、内視鏡室が7室から10室に増やされた。通院治療用の病床数は26床から50床に増床、病床数は801床になったことで、1日当たり1300人の外来患者が見込まれている。

    がん治療は最新機器の病院で受けることが副作用は最小化、治療効果は最大化できる。

    毎日食べると がんリスク増の食品

    海藻食べ過ぎでがんリスク増の理由

    女性の海藻の食べ過ぎはがんリスクを高めることが研究調査で実証された。国立がん研究センターと国立環境研究所の合同研究チームが20年近く追跡調査し、結果を纏めた。(詳細は欧州のがん専門誌に発表)


    研究調査では、1990~2007年の長期間に対して、 40~69歳の女性約5万人を対象として追跡調査を実施した。調査開始後に甲状腺がんを発症した閉経後の女性は111人で、海藻をほぼ毎日食べる女性は、週2回以下の女性に比べて2.4倍がんリスクが高いことが判明したのだ。甲状腺がんの一種である乳頭がんでは、3.8倍の差が確認された。 


    閉経後の女性が海藻を過剰摂取すると、甲状腺がんのリスクが高まることが明白になったと言えるだろう。


    がんリスクの原因は海藻に含まれるヨウ素の過剰摂取であると分析されている。実は、ヨウ素は必須栄養素の一つであり、ヨウ素が不足すると皮膚の乾燥やひび割れ・しゃがれた声、皮膚の浮腫、精神異常などの症状が懸念される。しかし、日本人の食文化の性質上、ヨウ素が過剰摂取される傾向は強いのだ。


    必要だけれど"過剰摂取"が、ヨウ素のがんリスクだという認識が妥当だろう。

    2012年4月10日

    培養したNK細胞で がん療法

    培養免疫細胞を用いたがん治療の臨床研究

    培養したナチュラルキラー細胞(NK細胞)による がん免疫細胞療法の臨床研究が開始される。特殊技術で培養したNK細胞を末期の消化器がん(胃がん, 大腸がん, 食道がん) の患者に投与して、がん治療効果と安全性が評価される。

    ウイルス感染や細胞のがん化から生体を防御する働きがNK細胞にはある。特殊な培養法で培養したT細胞を利用することで、約90%と高純度のNK細胞を大量に培養する技術が開発され、純度の高い免疫細胞によるがん免疫細胞療法が可能になった。既にマウスを用いた動物実験では、がん縮小と転移抑制に高い効果があることが確認されている。

    臨床試験は、2014年3月31日まで約2年間実施の予定。試験の実施は、タカラバイオと京都府立医科大学が共同であたる。

    培養免疫細胞を用いたがん免疫細胞療法の効果が検証されれば、次には、NK細胞だけでなく、ナイーブT細胞、抗体医薬との併用でさらに効果的な治療法が検討されている。

    がんに効く糖尿病治療薬

    糖尿病治療薬、がんに有用の可能性

    糖尿病の治療薬「メトホルミン」(商品名「メトグルコ」など)が、多くのがん患者に対して有用性を示す研究成果が発表された。糖尿病とがんに密接な関連があることは既知であり、メトホルミンを使うことで糖尿病患者のがん発症が抑制されるという研究結果は、主に大腸がんを中心に報告されてきた。今回の発表では、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、口腔(こうくう)がん、メラノーマ(悪性黒色腫)と、種類の異なるがんに対しての有効性が検証され、結果が得られた とされている。

    膵臓がんに対しては、メトホルミン使用により32%の死亡リスク低下が得られた。前立腺がん患者への安全性を確認が確認された。また、肝臓がんへの投与では、保護的作用の可能性が示唆された。さらに、口腔がんへの進展は最大で90%も抑制されたのだ。

    メトホルミンと抗がん薬の併用療法が、治療後の経過があまり良くないメラノーマに対する新たな選択肢となる可能性は高まっている。

    研究論文は、3月末の米国がん研究協会(AACR)へ発表された。

    胃がんの微小転移に新治療法

    進行した胃がん治療では、胃がん患部を手術で切除しても転移・再発することが多く、術後5年間の生存率は約30%と低いことが問題だった。がん再発の原因の6割以上は、腹膜へのがん転移とされていた。転移したがん病巣が非常に微小なために、手術時に肉眼で見つけ、切除することが困難だったからだ。

    しかし、胃がんから転移した肉眼では見えないほどの小さな転移がんを、容易に発見する手法が開発された。蛍光物質で微細な転移がんを光らせて発見が容易になったのだ。この腹腔鏡で早期に見つけ治療する新治療法開発は、大阪府立成人病センターが開発に成功した。

    新胃がん治療法では、蛍光物質を投与することで微小な転移がんを赤く光らせる。小さながんでも転移を早く発見できため効果的に抗がん剤治療が可能なのだ。

    胃がんだけでなく、転移癌に悩む多くの患者を救える新しい治療法となる期待は大きい。

    2012年4月9日

    家族から遺伝するがん、検査と予防治療

    乳がん、早期発見で治療に選択肢

    検査で予見する遺伝性乳がん、卵巣がんに予防切除の選択肢も

    遺伝子で予見されるがんがある。遺伝の影響を強く受ける乳がん、卵巣がんだ。「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれ、特定の遺伝子を検査することで、がんの発病リスクの高低が測られる。

    乳がんと卵巣がんの遺伝性HBOCは、BRCA1、BRCA2という二つの遺伝子の変異で測られる。海外での研究報告では、BRCA1に変異があると約40%の人で、BRCA2の変異では約10%には、 70歳までに卵巣がんを発症するリスクが高いと報告されている。乳がんリスクに関しては、BRCA1で約65%、BRCA2で45%だ。女性だけでなく、男性のHBOCに関しても、 男性乳がんや膵臓がんのリスクが高まると報告されている。

    日本では女性の20数人に1人が乳がんを発症するが、その5~10%程度が遺伝で乳がん、卵巣がんを発症していると言われている。 200人におおよそ1人の確率は、かなり高いリスクだ。

    しかし、近年は事前に遺伝子の検査を受けることで、 HBOCの遺伝子に変異が無いか調べる検査を受けることができる。この遺伝子検査は保険対象外のために、20数万円の自己負担が必要。

    もしこの検査で遺伝子の変異が発見された場合には、 3カ月~半年おきに検診を受けることで、がんのリスクをコントロールすることになる。がんリスクが高いことを自覚して、早期発見早期治療に努めるのだ。
    乳がんリスクに関しては、早期発見が比較的容易なために治療の選択肢が多い。

    ところが、卵巣がんは自覚症状が少ないために、発見後の治療が難しい例が多い。そこで、健康な卵巣を手術で切除することも、選択肢の一つとされている。国内でも、一部の病院でこの予防的な卵巣摘出手術を行っている。ただし、この手術に保険は適用されないので、自費で80万~100万円を負担せねばならない。

    HBOCの遺伝子検査は、2011年末までの8年弱で、国内では約500件の検査が行われた。 HBOCの可能性があると分かれば、専門医がいる病院では、医師や認定遺伝カウンセラーが、遺伝カウンセリングの外来で治療の選択肢だけでなく諸々に患者の相談に応じてくれる。

    遺伝子を調べた結果が「BRCA1遺伝子に変異あり」とされたことで、乳房の全摘を決断した女性もいる。姉妹を卵巣がんで亡くしていたために、さらに卵巣の切除も希望したが、主治医から諭された。その後は、3カ月に1度、超音波と血液で卵巣がん検診を継続している。

    遺伝子検査でがんリスクを測る技術が進歩したことで、がん患者個々のがんリスク管理とメンタルケアの重要性が増してきている。遺伝子検査とがん治療は、カウンセリング態勢が整った病院で受けるのが賢明な理由でもある。